認知症患者の睡眠障害―自宅より介護施設で起きやすい:筑波大学
(2022年10月31日発表)
筑波大学は10月31日、アルツハイマー型認知症では自宅で生活している患者より介護施設の患者の方が不眠や深夜徘徊などの睡眠障害を起こしやすい傾向があると発表した。患者の介護やケアをしている医療従事者を対象にアンケート調査を実施した結果、明らかになった。
調査したのは筑波大の新井哲明教授の研究チーム。茨城県内にある745の介護施設に質問票を送付、2016年4月1日からの1年間に「認知症の行動・心理症状(BPSD)」を示す患者の介護やケアをした56施設の医療従事者から回答を得た。
その結果、アルツハイマー型認知症の診断を受けていた患者は130人いたが、そのうち在宅介護は72人、施設介護は58人だった。患者の性別や年代、介護度については両グループで明らかな差はなかった。ただ、認知症の行動・心理症状について詳しく分析したところ、睡眠障害だけは統計学的にみても明らかに施設介護の患者の方が多かった。在宅介護の場合は睡眠障害のある患者の割合は33.3%だったのに対し、施設介護では60.3%の患者が睡眠障害を示していることがわかった。
この結果から、研究チームは「睡眠障害は、自宅よりも施設で生活しているアルツハイマー型認知症において多く観察されることが明らかになった」と話している。ただ、その原因については、①睡眠障害を持つ患者が施設に入所しやすい、②施設入所が睡眠障害を誘発しやすい、③介護に携わる医療従事者が施設の患者の睡眠障害を問題視しやすい――などの理由も考えられるという。そのため研究チームは、今後さらにデータを収集し、アルツハイマー型認知症患者の居住形態と睡眠障害の関連についてより詳しく検討する予定だ。