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山形県酒田沖の海底メタン湧出域を本格調査―最大幅数m規模の微生物マットを複数箇所で確認:産業技術総合研究所

(2022年11月7日発表)

 (国)産業技術総合研究所は11月7日、山形県酒田沖の海底メタン湧出域を調査したところ、地下からのメタン湧出を示唆する微生物の集合体「微生物マット」が複数箇所で確認されたと発表した。微生物マットとその周辺の海底堆積物に含まれる元素を分析したところ、微生物マットの下ではモリブデンが通常の10~100倍に濃縮していたという。

 

 この調査は資源エネルギー庁の「メタンハイドレートの研究開発事業」の一環。メタンハイドレートは都市ガスの主成分として知られるメタンの分子と水分子により低温高圧の環境下で形成される白い氷状の結晶で、日本周辺の海底下に多量に存在し、将来の国産エネルギー資源として期待されている。

 メタンハイドレートには砂層型と表層型があり、これまでは主に太平洋側の砂層型メタンハイドレートの調査・開発の検討が行われ、表層型については上越沖の調査研究が進められていた。

 今回調査したのは酒田沖の表層型メタンハイドレート胚胎域と呼ばれる海底メタン湧出域。海洋調査船「新世丸」と遠隔操作型無人探査機(ROV)「はくよう3000」を用いて2020年に実施した。

 調査の結果、酒田海丘と呼ばれる酒田沖の海底の隆起部に幅数cmから最大で数m規模の微生物マットが複数箇所に存在することが分かり、酒田海丘の海底でメタンを含む湧水のあることが示唆された。

 長さ約30cmの表層堆積物コアを採取し、堆積物中の硫黄および27種類の元素の含有量などを測定した結果、メタンの湧出のない地点の堆積物と比べ、微生物マット地点から採取した堆積物では硫黄の含有量が2~5倍高く、モリブデンは10~100倍高かった。

 また、微生物マット堆積物では地下深部から湧出するメタンと堆積物の直上の海水から供給される硫酸イオンが微生物を介して反応する「嫌気性メタン酸化」が起こっていることが明らかになった。

 海底堆積物中で硫化鉱物に取り込まれやすいモリブデンは酒田丘陵の微生物マット中で高濃度で検出されたが、同様に硫化鉱物に濃集しやすい銅などの他の微量元素は、酒田丘陵の微生物マット堆積物では濃集は認められなかった。

 

 今回の調査により、表層型メタンハイドレート胚胎域における微量金属元素の動態の把握や、鉱床の成因メカニズムの解明などにつながる成果が得られたとしている。