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イネの重要な病気、いもち病菌の遺伝子を発見:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2016年11月9日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月9日、岩手生物工学研究センター、東京大学生物生産工学研究センターと共同でイネやコムギに深刻な被害をもたらす、いもち病菌の遺伝子「RBF1」を発見したと発表した。この遺伝子が細胞の中に侵入してたんぱく質を分泌し、特殊な突起物を作ることで、イネのもつ病原菌防御反応を抑え込むことがわかった。新しいタイプのいもち病防除法につながるものとみて、さらに詳しい仕組みの解明に取り組んでいる。

  いもち病はカビの一種の糸状菌が引き起こすイネの代表的な病気。低温で雨が多い年にかかりやすく、抵抗性をもった品種改良や農薬による防除が難しいとされている。過去の冷害年には4~7%も減収になり、被害額は700億円から1,200億円に上った。

 植物には元々、感染する病原菌を察知して防御反応をおこし、自身を守る生理機能が備わっているが、いもち病菌はそれを巧妙に回避して感染していた。

 研究グループは、感染の際に活性化する分泌たんぱく質を作る遺伝子の中から特に活性の著しい遺伝子を調べ、RBF1を発見した。この遺伝子を欠いたいもち病菌はイネに感染できなかった。

 この遺伝子がイネの細胞に侵入するたびに繰り返し発現する様子を、研究グループが独自に開発した長時間生細胞蛍光イメージング法で動画として捉えることにも成功した。

 その結果、RBF1が作るあるたんぱく質がBICと呼ばれる突起物を作り、イネの生理機構をかく乱し、感染させる仕組みを突き止めた。さらにRBF1遺伝子がどのように活性化され、BICを作るかの解明を進めている。