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有機半導体を高性能化―コーヒー成分で電流100倍増:産業技術総合研究所ほか

(2022年12月2日発表)

 (国)産業技術総合研究所と筑波大学は12月2日、コーヒーに含まれる成分「カフェ酸」で有機半導体素子の性能が大幅に向上することを突き止めたと発表した。素子の電極表面にカフェ酸の薄膜層を作ることで、素子に流れる電流を100倍にできた。植物由来の物質で半導体の大幅な性能向上が実現できるため、将来的に使用済み素子の大量廃棄で問題となる環境破壊の削減にもつながると期待している。

 研究グループは、カフェ酸が分子構造の特徴から金属製の電極に吸着しやすいことに注目、電極表面に薄膜層を作れば表面の電位が変わり電流が流れやすくなると考えた。そこで、実際に電極表面にカフェ酸の薄膜層を形成したところ、電極表面でカフェ酸の分子が自発的に向きをそろえて並ぶことが分かった。

 その結果、有機半導体素子に流れる電流はカフェ酸のないときに比べると最大100倍にまで増加、素子の性能を大幅に向上させられることを突き止めた。また、開発した技術は有機半導体素子全般の電極に応用が可能という。

 有機半導体素子の性能向上には、一般に有機半導体と電極が接触する境界面での電荷移動の効率を高めることが重要とされている。そのため従来は電荷を流しやすくする材料として、導電性ポリマーや遷移金属酸化物の薄膜層も検討されていた。ただ、これらの薄膜層では使用済みの有機半導体素子を廃棄する際の環境への悪影響や、埋蔵量に限りがある金属元素の使用に課題が残るとされていた。

 研究グループは、今後の研究課題について「使用済み素子の廃棄後の環境負荷を極限まで下げることを目標とし、循環型社会に適合したオールバイオマス由来の素子作りに取り組んでいく」と話している。