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秋まき小麦の重要病害を農薬に頼らず低減―環境保全型の病害防除技術として期待:農業・食品産業技術総合研究機構

(2022年12月5日発表)

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農業用のタイヤローラーを用いた雪踏み試験の様子
(画像提供:農研機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は12月5日、秋まき小麦の重要病害である「雪腐病(ゆきぐされびょう)」の発生を減らす方法を見つけたと発表した。雪腐病は積雪下の小麦畑で葉や茎に繁殖するカビなどによる病害。今回「雪踏み」と呼ぶ小麦畑の雪に対し上から圧力をかける圧雪作業を加えることで発生を減らすことに成功した。農薬などは使わない。環境保全型の病害防除技術として普及が期待される。

 小麦の種は、春と秋にまかれ、秋まき小麦の新芽は厳しい冬をじっと耐え雪どけと共に伸びていくが、積雪地帯では数カ月間も雪の下にあるため、弱い葉は菌に感染して雪腐病となり被害が大きくなると枯死してしまう。それを防ぐため農薬散布による防除が行われているが積雪が早く農薬散布ができなかったり、散布後の降雨や融雪による効果の低下が起きたり、経費や労力面の課題もあるため、農薬に頼らない新たな防除技術が求められている。

 そこで、農研機構は、2016年から同機構北海道農業研究センターの芽室研究拠点(北海道河西郡芽室町)を舞台にして秋まき小麦の雪腐病の発生調査と対策の研究に取り組んだ。

 作物の上や周囲に積もっている積雪は、多くの空気を含んでおり、丁度布団のような断熱効果があり、外気温が低く寒くても雪の下(地表)の温度は0℃前後に保たれ、雪腐病菌の活動に適した温度状態にある。そこに目をつけたのが農業用のタイヤローラーなどで圧雪し積雪層に含まれる空気を抜いて地表の温度を雪腐病菌の活動に適した温度より低い温度にする雪踏み。

 北海道の東部(道東)では、収穫時に取り残したジャガイモが翌年に雑草化する「野良イモ」が多発しその発生を抑える対策として雪踏みが行われ、オホーツク・十勝地域を中心に数百ha(ヘクタール)以上の畑で実施されている。

 今回の成果は、いわばその小麦への応用版といえる。

 雪腐病は、温度によって発生する種類が異なるが、➀12月初旬に積雪がある早雪年には雪踏みを積雪期間の半ばまでに4~5回行うことで雪腐病による枯れが一部に留まった、②遅雪年に雪踏みを行うとほとんど雪腐病は発生しなかった、③冬の半ばまで長く雪踏みを行うことで雪腐病の発生を抑える効果を継続できる、といったことが実験の結果判明したという。

 全国的に積雪の時期や積雪量の年次変化が大きくなっており、雪腐病防除の重要性が増しているといわれている。研究グループはそれに応えるため「実証試験を通じて環境と調和のとれた持続可能な病害防除対策として技術化を図りたい」と話している。

雪腐黒色小粒菌核病が減少する要因
積雪が早いと、地表の温度が0℃前後の期間が長くなり、雪腐黒色小粒菌核病の発生が多くなる。雪踏みをすると、0℃前後の期間が短くなり、雪腐病の発生が少なくなる。 (画像提供:農研機構)
雪腐大粒菌核病が減少する要因
積雪が遅く、低温にあうと雪腐大粒菌核病に感染する可能性が高まるが、雪踏みをすると地表の温度が0℃前後の期間が短くなり雪腐病の発生が少なくなるため、その後の生育に悪影響が少ない。(画像提供:農研機構)