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トンネル電子をテラヘルツ波で自由に制御―ナノレベルの超高速トランジスタ実現も:横浜国立大学/筑波大学

(2016年11月8日 発表)

 横浜国立大学と筑波大学の研究グループは11月8日、普通なら電子が飛び越えられない電極間のすき間を自由に飛び越える量子現象「トンネル電子」を電磁波で自由に制御することに成功したと発表した。超高速で動作するわずか1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の極小トランジスタ実現の可能性を明らかにしたもので、将来のナノエレクトロニクス開発に新たな方向性を示せたと期待している。

 横浜国大の武田淳教授らと筑波大の重川秀実教授らの研究グループが、走査トンネル顕微鏡(STM)を使って成功した。走査トンネル顕微鏡は、先端を細くとがらした探針を物質表面に限りなく近づけて走査、その時に量子効果で微細なすき間を飛び越えるトンネル電子を利用して物質表面の凹凸を調べる。

 研究グループは、走査トンネル顕微鏡の探針を炭素の結晶が層状に重なったグラファイトの表面に1nmまで近づけた。このとき同時に、可視光と電波の中間領域の単一周波数を持つ電磁波「テラヘルツ波」を、波の山と谷の位置関係(位相)を制御しながら照射した。

 この結果、4兆分の1秒という短時間に数万~数十万個のトンネル電子が探針とグラファイトの間を行き来するのを自由に制御することができた。探針とグラファイトの間を電子がどちら向きに流れるかについても、テラヘルツ波の位相制御で自由に変えられた。

 研究グループは、今回の実験で確認された電子制御技術について「原子スケールかつ超高速で物質の持つ諸特性を自在に制御できる強力なツール」になると期待している。