AIで統合失調症診断―脳活動を直接評価:東京医科歯科大学/情報通信研究機構/産業技術総合研究所ほか
(2022年12月21日発表)
東京医科歯科大学、(国)情報通信研究機構、(国)産業技術総合研究所などの研究グループは12月21日、脳の活動状況を調べる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と人工知能(AI)を組み合わせて統合失調症の診断・治療に新たな道を開いたと発表した。統合失調症患者の脳内では言葉の意味関係に乱れが生じていることを突き止めた。患者の発話によらない客観的な診断・治療法の開発につながると期待している。
統合失調症は思春期から30歳くらいまでに100人に一人が発症、幻覚や妄想などの症状を起こす病気として知られている。患者の会話はしばしば内容がまとまらず、支離滅裂になる「連合弛緩」と呼ばれる症状を示す。ただ、従来はこうした言葉の「意味関係の乱れ」を脳活動から直接とらえることはできなかった。
そこで東京医科歯科大、情報通信研究機構、産業技術総合研究所のほか、大阪大学、京都大学で構成した研究グループは、統合失調症患者と健常者がさまざまな動画を見ているときの脳活動をfMRIで測定、その画像パターンをAIで詳しく比較、解析した。具体的には個々の単語の意味に対応する脳活動パターンを推定し、脳内でさまざまな単語がどのような関係でつながっているかという「脳内意味ネットワーク」を構築した。
その結果、統合失調症の患者では、健常者よりもネットワーク構造が無秩序になっていること、さらにこの無秩序化は思考障害と関連することが明らかになった。また患者の脳内意味ネットワークでは、「生き物」や「人工物」といった大まかなカテゴリーでははっきり区分される傾向が強いが、各カテゴリーの内部構造は無秩序化していることが明らかになった。
これらの結果から、研究グループは「統合失調症患者では脳内の意味関係に乱れがあるために、妄想や会話の脱線などの思考障害が生じる」と分析。患者の主観的な体験を本人に話してもらうことなく、脳活動から直接評価する診断・治療に新たな可能性がひらけると期待している。