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JAXA、小惑星リュウグウの砂の分析成果を発表―大気のない天体表面の宇宙風化の実態明らかに:宇宙航空研究開発機構ほか

(2022年12月20日発表)

 (国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月20日、小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星リュウグウの試料を分析していた「砂の物質分析チーム」の成果を発表した。リュウグウが属するC型小惑星の宇宙風化の実態が初めて明らかになったという。

 太陽系の大気のない天体表面には、惑星間を高速で移動する微小な固体物質(隕石)のマイクロメテオロイドが秒速10kmを超えるような速度で衝突している。また、太陽からのプラズマの流れである太陽風が照射している。さらに、太陽や銀河宇宙線の照射に常に曝されており、非常に厳しい環境にある。

 これらの影響で大気と磁場のない天体の表面では化学組成、構造、光学的特性が徐々に変わっていることが知られている。この変化を宇宙風化という。

 今回の分析で、小惑星リュウグウの表面物質も宇宙風化を受けていることが示された。小惑星リュウグウには、月にも小惑星イトカワにも含まれていない粘土の仲間の含水層状珪酸塩鉱物が大量に含まれている。そのため、その宇宙風化は、水のない月や小惑星イトカワのものとは異なる独特のものだった。

 小惑星リュウグウでの宇宙風化では、マイクロメテオロイドの衝突による加熱によって石や砂の表面数ミクロンが溶融しているものがかなりあるという特徴が認められた。この溶融で粘土は脱水し、天体全体が強い加熱を受けたかのように太陽光を反射していることが明らかになった。

 小惑星リュウグウは、炭素系の物質を主成分とする、いわゆるC型小惑星に属している。C型小惑星は、既知の小惑星の多くを占め、小惑星が集中しているメインベルトに最も多く存在する。今回、C型小惑星の宇宙風化の実態が初めて明らかになったことにより、水を含む小惑星の反射スペクトル、つまり、小惑星が太陽光をどのように反射しているかの解釈が大きく進むことが期待されるという。