「セルフメディケーション」で調査を実施―慢性疾患の介護者対象に世界初の成果:筑波大学
(2023年1月23日発表)
筑波大学医学医療系の舛本祥一講師らの研究グループは1月23日、慢性の病気の介護を行う「セルフメディケーション」の調査結果をまとめ発表した。
セルフメディケーションは、WHO(世界保健機関)の定義によると「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」となっており、具体的には医者にかからず在宅で市販薬などにより対応する健康管理を指す。
この健康管理法は、医療機関での受診を少なくし、医療費の抑制につながるとして世界的に注目され、我が国でも2017年に税制面で優遇する「セルフメディケーション税制」を新設しサポートしている。
医者にかからないことから、薬剤の誤った使用や乱用、予期しない薬剤同士の相互作用のリスクを伴うため、これまでの研究は患者自身の健康に関する調査が多く、重要な家族介護者に焦点を当てた調査は限られていた。今回の成果は「家族介護者のセルフメディケーションの実態について報告した世界的にも初めての研究」と研究グループはいっている。
在宅で療養する慢性の病気を患う患者は、リハビリテーション職、薬剤師、ケアマネジャーなど様々な医療専門職からケア(世話や配慮)を受けるチャンスがあり、家族介護者は患者の看護を通じてそれらの専門職とコミュニケーションをとることができる。
そこで、研究グループは、家族介護者自身の健康を保つセルフメディケーションの実態を知ることが重要であると考え、茨城県内の3つの自治体に居住する慢性疾患の自宅療養を行っていた患者の家族介護者を対象にして2020年の11月から12月にかけ無記名の郵送アンケートを送る方法を使って調査を実施した。
アンケートでは、介護者自身が医療や介護の専門職から受けたケアとセルフメディケーションの実態を調査し、887名から回答を得て欠損データがあった人を除いた750名のデータ(平均年齢61.4歳、女性が74.3%)を解析した。
その結果、家族介護者の約3分の1がセルフメディケーションを行っていたことが分かった。
一方、さまざまな専門職から良いケアを受けていると評価している家族介護者は、セルフメディケーションを行わない傾向にあることが分かった。
この結果から、研究グループは「医療・介護専門職は、患者の健康状態のみならず、家族介護者の健康にも目を向け、セルフメディケーションに関する適切な助言を行うべきである」ことが判明したと話している。