新種の微細藻類発見―最少遺伝子で有用物質を光合成:東京大学/東京理科大学/日本女子大学/国立環境研究所ほか
(2023年1月27日発表)
メダカモの電子顕微鏡写真(左)と模式図(右)
メダカモは非常に単純な細胞内構造を示す。細胞内小器官として、核(n)、核小体(no)、液胞(v)、ミトコンドリア(mt)、葉緑体(cp)、ゴルジ体(g)を1個ずつ持つ。また、葉緑体内にはデンプン(s)を貯蔵する。スケールバーは500 nmを示す。©黒岩 常祥
東京大学、(国)国立環境研究所などの研究グループは1月27日、肉眼では見えないほど小さい新種植物プランクトンの微細藻類を発見、淡水性緑藻類としては持っている遺伝子の数が最も少ないことを突き止めたと発表した。藻類が光合成で有機物を作るのに必要な遺伝子1,263個も解明、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)から高機能食品やバイオ燃料、化粧品などの有用物質を低コストで作る応用研究にも役立つと期待している。
東大、国環研のほか東京理科大、日本女子大、山口大も加わった研究グループが発見したのは、直径千分の1mmほどの微細藻類。淡水性緑藻としては最小クラスの新種で、メダカモと名付けた。微細藻類は光合成による二酸化炭素の回収と固定に重要な役割を果たしているため、その性質を詳しく調べるとともに遺伝情報を解析した。
その結果、メダカモは光合成をする生物でありながら遺伝子を7,629個しか持っておらず、今までに報告された淡水性緑藻の中では遺伝子の数が最も少ないことが分かった。さらにこの遺伝情報を他の微細藻類と比較したところ、藻類にとって必須とされる遺伝子は1,263個であることを確認した。これらの遺伝子の内訳を調べたところ、生命活動の基本メカニズムに関する因子の数が少なかった。
これらのことから、メダカモは光合成をする真核生物としては必要最小限の遺伝子しか持っていないことが分かった。また、メダカモは光の明暗を変えることで同調培養できるので人手で管理しながら大量培養することが容易で、有用物質の生産に応用しやすいことが明らかになった。
研究グループは、今回の成果について「光合成機能を他の生物に付与する合成生物学的研究の重要な基盤情報になる」「高密度の大量培養によって高機能食品、バイオ燃料、化粧品などの有用材料を低コスト、カーボンフリーで生み出す生物資源としても活用できる」と期待している。