「かぼちゃ」収穫の重労働から解放、新品種を開発―試験研究用の種子有償で提供:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2023年1月31日発表)
かぼちゃ果実の横断面 右下の白色のバーは10cmを示す。(提供:農研機構北海道農業研究センター )
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は1月31日、朝日アグリア(株)と共同で「かぼちゃ」生産者の収穫作業を今より楽にできる新品種を開発したと発表した。朝日アグリアが種子の有償提供を行うという。
かぼちゃの収穫作業は、重労働なため産地では機械の導入などによる労力の軽減が求められている。新品種は、かぼちゃの実る位置(着果位置)が揃っていてその位置を見つけ易いことから生産者の管理作業や収穫作業の軽労化が可能といっている。
我が国で現在栽培されているかぼちゃは、西洋かぼちゃと呼ばれる品種で、他の樹木や物体を支えにしてつるが伸びていくつる性であるため、実をつける位置が安定しておらず収穫適期のかぼちゃを見つけるのに労力がかかってしまい収穫作業が重労働になる難題を抱えている。
そこで、農研機構の北海道農業研究センター(札幌市)は、その課題解決に取り組み、着果位置が安定している品種の開発研究を行ってきた。
新品種は、同センターと朝日アグリアの両者がそれぞれ別々に開発した両方の成果を組み合わせて得た「F₁品種」。
F₁品種は、異なる特徴を持った親をかけ合わせることで生まれたそれぞれの優れた性質を合わせ持った雑種のこと。
新品種は、F₁技術によって同センターの花粉親と朝日アグリアの種子親から得た。
名称を「豊朝交(ほうちょうこう)1号」といい、2020年から2か年かけて行ったハウスでの栽培試験では着果率80%強という既存品種(6~25%)を大幅に上回る結果を得た。密植(みっしょく:密集した栽培)が行え10a(アール、1aは100㎡)に800本から1,000本程度のかぼちゃが植えられるという。
育った1個のかぼちゃの重さは、既存種と大差なく1.3㎏。表面は濃い緑色で、断面の果肉は濃い黄色。ホクホクした食感をしている。
農研機構は、かぼちゃの収穫が重労働であるため栽培を断念している産地への普及を目指しており、かぼちゃ収穫の機械化につながることが期待され、スーパーなどの量販店や加工業者などから求められている国産かぼちゃの安定供給に寄与できると見ている。
朝日アグリアが2023年以降に栽培用種子の販売を始める予定で、それまでの間、試験研究用として種子の有償提供を行うことにしている。