リチウム電池の材料合成に新技術―炭素化合物を簡単・高効率に:産業技術総合研究所
(2023年1月31日発表)
(国)産業技術総合研究所は1月31日、リチウムイオン電池の材料などに使われる炭素化合物「グラファイト層間化合物」を効率よく合成する技術を開発したと発表した。従来は合成に数日から数週間かかったが、新技術では原料の粉末グラファイトに金属ナトリウムを室温で混ぜたり、数時間熱処理したりするだけ。今後は高品質グラファイト層間化合物の大量合成や電池電極への応用とともに、金属ナトリウムの触媒メカニズムの解明に取り組む。
グラファイトは、炭素原子が亀の甲状に結合した薄膜状のグラフェンが弱い結合力で何層にも積層した物質で、高い電気・熱伝導度など特異な性質を持つ。このグラフェン薄膜の間にリチウムやカリウムなどの原子を挟んだ物質をグラファイト層間化合物と呼び、導電性やガス吸蔵性、超伝導性など多様な機能を持つ新材料として注目されている。
産総研が今回開発したのは、従来は複雑な合成プロセスで数日から数週間欠けて合成していたグラファイト層間化合物の新しい合成法。原料の粉末グラファイトにリチウムやカリウムなどのアルカリ金属やストロンチウムなどのアルカリ土類金属を室温で混ぜたり、約250℃で数時間反応させたりするだけで、グラファイト層間化合物が合成できるという。
例えば、アルカリ土類金属の原子を挟んだグラファイト層間化合物は、比較的高い温度で超伝導性を示すなど優れた特性を持つ新材料として注目されている。新技術ではこれを250℃で数時間加熱するだけで合成できる。350~450℃で1週間から10日かけて合成していた従来法に比べ、大幅に短縮できた。
新技術は、安価な粉末グラファイトを原料として使えるうえ設備も簡単。さらに従来法に比べて格段に低温・短時間でグラファイト層間化合物が合成できるとして、今後「グラファイト層間化合物の大量合成と応用展開を検討する」ことにしている。