今冬の鳥インフルエンザ―3グループのウイルス同時に侵入:農業・食品産業技術総合研究機構
(2023年2月9日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は2月9日、2022年10月から23年1月にかけて日本で過去最高の猛威を振るった鳥インフルエンザの病原ウイルスは3グループあったことを遺伝子解析で突き止めたと発表した。2グループは昨シーズンに国内で検出されたものと同じで、残りの1グループがシベリアと中国中部で分離されものと近縁だった。同機構はこの成果が今後の防疫体制の強化につながると期待している。
2022年10月28日に岡山県と北海道の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザは養鶏場に大きな被害をもたらしたが、病死した鶏からH5N1亜型のウイルスが分離された。さらに2023年1月17日までに60事例のH5亜型高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されたが、このうち1事例目から59事例目までがH5N1亜型で、60事例目がH5N2亜型だった。
そこで農研機構は、この60事例から分離されたウイルスの全遺伝情報であるゲノム配列を解読、詳しく分析した。その結果、1事例目から59事例目まではいずれも、2021年シーズンに国内で検出された二つのグループと近縁関係にあるウイルスだった。さらに、これらのウイルスは2020年から2022年にかけて、欧州で初めて分離されたウイルスと近縁関係にあることも確認できた。
最後の60事例目については、2021年に西シベリアと中国で分離されたウイルスと近縁関係にあることが分かった。この60事例目と近縁のゲノム配列を持つウイルスは、北海道のハシブトガラスなどの野鳥からも172事例が見つかっている。
これらの結果から、「今回の鳥インフルエンザの流行では3グループのウイルスがシーズン初期から同一期間中に国内に侵入していたことが明らかになった」として、今後の診断体制を含む国内の鳥インフルエンザ防疫体制の強化につながると期待している。