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極低温下の量子スピン液体で新発見―高温超電導現象の解明も期待:物質・材料研究機構/東京大学

(2016年11月14日発表)

 (国)物質・材料研究機構と東京大学は11月14日、三角格子状の構造を持つ有機物質の結晶が極低温下で示す新現象を発見したと発表した。極低温下でも物質内の電子の向き(スピン)がそろわない量子スピン液体と呼ばれる状態で「磁化率の量子臨界現象」と呼ぶ現象を初めて観測した。量子スピン液体は高温超電導現象とも強く関係していると注目されており、その仕組みの解明にもつながると期待している。

 物材研の磯野貴之(ポスドク研究員)、宇治進也(機能性材料研究拠点、副拠点長)らと東大の鹿野田一司教授らの研究グループが発見した。

 物質の温度を下げていくと、一般に水が氷になるように物質中の原子や分子は整列して安定した秩序ある状態に変異する。ところが、極低温下でも物質中の電子のスピンがふらふらしたままの状態を示すことがある。この状態にある物質を特に「量子スピン液体」と呼んでいる。

 研究グループは、量子スピン液体になる有機物質κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3の単結晶を作成、絶対温度0.03K(ケルビン、約-273℃)という極低温領域にまで温度を下げ、17テスラ(テスラは磁場の単位)という強磁場領域まで磁場を変動させたときに、有機物質の磁化率がどう変化するかを調べた。

 その結果、温度と磁場が極めて小さいときに磁気的な秩序を示すような状態「量子臨界点」が現れた。また、有機物質の磁化率がこの臨界点に向かって発散していくように振る舞う量子臨界現象が観測されることもわかった。さらに、物質の構成元素などにかかわらず物質の対称性など、基本的な性質のみで決まる「磁化率の臨界指数」と呼ばれる数値を決めることにも初めて成功した。

 研究グループは「この臨界指数は量子スピン液体の発現機構を明らかにするための理論モデル構築に重要な指標になる」としており、今後量子スピン液体との関係が指摘されている高温超伝導現象の解明につながるとみている。