小惑星リュウグウからの採取試料の有機物を分析―黒い固体状の有機物が主要な割合を占めていること判明:宇宙航空研究開発機構ほか
(2023年2月24日発表)
(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月24日、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星リュウグウの試料中の固体有機物の分析結果を発表した。有機物の主要な割合を黒い固体有機物が占めていることが判明、これが小惑星リュウグウが黒い天体であることを特徴付けている要因かも知れないと指摘している。
小惑星や彗星に含まれる有機物は約46億年前に太陽系が誕生した当時に形成され、地球を含む様々な惑星、さらには生命の材料物質として寄与したと推測されている。しかし、地球外有機物の研究対象の多くはこれまで隕石や宇宙塵に限られ、小惑星にどのような有機物が分布しているのか分かっていなかった。
分析チームは今回、サイズ200-900µm(マイクロメートル、1µmは1,000分の1mm )の微粒子37個からなる小惑星リュウグウの試料について、非破壊検査と、酸処理を用いた破壊検査を実施し、小惑星リュウグウ試料中の固体有機物の化学組成、同位体組成、形態を分析した。
その結果、試料には重水素または窒素15、あるいはその双方が濃縮した領域が検出された。このような同位体組成はマイナス200℃以下の低温環境でのみ生じることが分かっており、地球上の有機物には見られない。したがって、これらの少なくとも一部の有機物は星間分子雲や原始惑星系円盤外側などの極低温環境で形成されたことが明らかになった。
試料を酸処理して得られた酸不溶性残渣を分析したところ、高い収率で回収された残渣は、黒い固体状の有機物であった。非破壊分析でも同様な結果が得られており、リュウグウ試料の有機物の主要な割合を黒い固体有機物が占めていると結論づけられた。
炭素質のC型小惑星であるリュウグウの有機物と、始原的な炭素質コンドライト隕石の有機物とを比較したところ、両有機物の組成は似ているが、リュウグウの方が隕石に比べて化学組成・同位体組成・形態に多様性があることが明らかになった。
これは、リュウグウの母天体における液体の水、有機物、鉱物との反応が様々な条件で進行してきたことを示すもので、星間分子雲や原始惑星系円盤で生じた初生の有機物が分解され、分解生成物から新たな有機物が合成されるといったプロセスを繰り返しながら有機物の組成が多様に化学進化した歴史が裏付けられたとしている。