沈み込み帯における流体移動の痕跡をキャッチ―プレート境界地震のメカニズム解明へ:東北大学/高エネルギー加速器研究機構ほか
(2023年4月6日発表)
沈み込み帯における流体活動の模式図。(A)沈み込むプレートから放出された流体の蓄積によりプレート境界の流体圧が増加する。流体圧が高まったプレート境界では地震が発生する。(B)地震活動によって亀裂ネットワークが形成され、流体が沈み込むプレート上盤のマントルを通過し浅部へ移動していく。亀裂内に流体から鉱物が析出し、鉱物脈が形成される。
©吉田 一貴
東北大学と高エネルギー加速器研究機構、秋田大学などの共同研究グループは4月6日、プレートの沈み込み帯における流体移動の痕跡を上盤マントルで発見したと発表した。沈み込み帯における地震活動と流体との関係を示唆する成果であり、プレート境界地震のメカニズム解明への貢献が期待されるという。
沈み込み帯で観測される地震活動は流体と関係していると推測されてきたが、直接的な物的証拠を得ることが難しく、これまではよく分かっていなかった。
研究グループは今回、中東のオマーン国に露出している地殻、マントルの岩石からなる地質体(オフィオライト)に着目し、掘削・調査した。このオフィオライトは、過去に沈み込み帯の上盤に位置していたものが地殻変動により地表に露出したもの。
採取した岩石コア試料を分析した結果、変質したマントル岩の蛇紋岩には、高温型蛇紋石の鉱物脈がネットワーク状に発達していること、この鉱物脈は流体によってできる特徴的な反応帯を伴っており、この鉱物脈は沈み込むプレートから供給される流体の痕跡であることが示された。
また、熱力学的解析などにより、流体活動の継続時間が数ヶ月から数年と非常に短期間であり、流速が秒速0.1~1cmと大きいことが分かった。
ここで見出された流体活動は、現在の沈み込み帯で観測されている微小地震の継続時間や震源の移動速度と類似しており、沈み込み帯における地震発生過程と流体活動との関連を示唆するものであった。
沈み込むプレートの上盤マントルで生じている流体活動を岩石学的アプローチから初めて解明した今回の成果は、プレート境界地震のメカニズムの解明につながることが期待されるという。