地磁気を検出しマンガンノジュールの回転を実証―深層流による水圧や斜面下向きへの重力などで回転:産業技術総合研究所
(2023年4月18日発表)
(国)産業技術総合研究所と高知大学の共同研究グループは4月18日、マンガンノジュールに記録された過去の微弱な地磁気を検出することにより、マンガンノジュールが成長しながら回転していたことを実証したと発表した。海底鉱物資源の評価や海底深層流の変動の予測などへの成果の応用が期待されるという。
マンガンノジュールは深海底に存在する直径5~10cm程度の球状の塊(かたまり)で、マンガン団塊とも呼ばれる。鉄、マンガンをはじめニッケル、コバルトなどの有用元素を多く含むことから、海底鉱物資源として注目されている。生物の骨や歯などの微小な切片や鉱物の粒子などを核に、深海底で百万年に数mmというゆっくりした速度で成長しているとされる。
マンガンノジュールの多くは海底の堆積物表面に半分露出して存在しており、堆積物中に完全に埋もれることなく存在している理由はこれまではっきりしていなかった。
研究グループはマンガンノジュールの形成過程や形成場の解明を目指す一環としてこの謎に取り組み、世界で初めてマンガンノジュールが形成過程で回転していること、回転の原因や回転がマンガンノジュール内部の酸化状態と構造に与える影響を明らかにした。
研究では超伝導量子干渉素子を使った岩石磁力計を用い、マンガンノジュールに記録された過去の地磁気を測定、分析した。その結果、表面の試料が記録する自然残留磁化方位は現在の地球磁場方位と一致することが示されたが、マンガンノジュールに記録された自然残留磁化方位は、表面から中心部に向かって連続的に変化すること、それらは大円上に乗ることが確認された。
このことは、マンガンノジュールがこの大円の極の周りに回転し、それとともに磁化が連続的に記録されていったことを示しているという。回転の原動力としては、深層流による水圧と斜面下向きへの重力などが考えら、この組み合わせを要因として、深層流下流側で堆積物が巻き上げられて除去されたために徐々に深層流下流側に回転移動したと考えられるという。
今後成長過程などを詳細に解明したいとしている。
【参考(原論文)】
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