パラレルワールドの一方だけが極端に変化することなし―超弦理論のAサイドで成り立つ定理、Bサイドでも証明:筑波大学
(2023年5月8日発表)
筑波大学の数理物質系研究者のチームは5月8日、素粒子を紐と見る超弦理論におけるパラレルワールドで、これまでAサイドの世界で証明されていた「一定条件下では極端な変化は起きない」ということが、同じくBサイドでも証明されたと発表した。直感的に予想されていたAサイドとBサイドの世界の類似性の一つに数学的な証明を与える成果という。
理論物理学における超弦理論によると、Aサイド、Bサイドと名付けられたパラレルワールドの存在が予想されている。この2つの世界の違いはそれぞれの世界に隠されている6次元の図形AとBの違いであるとされているが、これらの図形は極めてよく似ている上、目に見えないため、理論上、我々はどちらの世界に住んでいるかを区別することはできない。
これまでは図形Aの性質についての研究が盛んに行われ、「ε(イプシロン)-正則性定理」と名付けられた定理が打ち立てられている。
すなわち、図形Aの内部に何らかの刺激が与えられると、その状態は時間の経過とともに変わる。この変化がより大きくなり、爆発する方向に向かうか、より小さくなり、元の状態に近づく方向に向かうかを考えた場合、「最初の変化が一定程度よりも小さければ、その後、変化が爆発することはなく、自然と元の状態に近づく。つまり、図形Aの内部は最初の状態から極端に異なる状態になることはない」というのがこの定理の内容。
その後、図形AとBはある法則に従って連動しており、見かけ上は異なる部分同士が対応していることが発見された。しかし、その連動の内容や程度はよく分かっていない。
研究チームは今回、図形Bの内部にもε-正則性があるかどうか、つまり図形Bの内部について、変化が爆発することがあり得るかどうか、を検討した。
その結果、Aサイドに関する知見をBサイドに転写することに成功し、図形Bの内部でも、一定の条件下では爆発は起こらない、つまり、パラレルワールドの一方だけが極端に変化することはないことを証明した。
この定理を証明するために、いくつかの仮定を置いているが、今後、これらの仮定がなくとも定理が成立するかどうかを解明したいとしている。