切り花の日持ちが優れたダリアの2品種を開発―イベント向けの業務用から家庭での観賞用の広がりを見込む:農業・食品産業技術総合研究機構
(2023年5月23日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部は5月23日、日持ちが優れたダリアの新品種「エターニティピーチ」と「エターニティシャイン」の2種類を新たに開発したと発表した。エターニティピーチは美しい褐色花弁が、エターニティシャインは落花しにくいのが特徴。いずれも日持ちが良く、流通性に優れていることから家庭の観賞用として需要が広がるものと期待している。
ダリアは華麗で優美な切り花として人気が高い。近年、生産・消費が伸び、ここ10年間で1.8倍に拡大した。2020年のダリア生産額は28億円超と推定されている。将来性が期待されているものの、切り花としては日持ちが劣るのが難点で、輸出などには不向きだった。
農研機構は、ダリアを業務用だけでなく家庭での鑑賞が広まるよう、「日持ち性」を重視した品種の開発を進めてきた。2014年から育種研究を始め、暗赤色の「エターニティトーチ」、濃桃色の「エターニティロマンス」、深赤色の「エターニティルージュ」の3種を開発し、昨年秋から市場へ出荷している。小売店や業者の評判がよく、消費者の人気も高まっている。
さらに多様性を高めるため、追加品種として日持ちがより長く、同時に花色が美しく、早生で生産性にも優れた「エターニティピーチ」と「エターニティシャイン」の2品種を開発した。
「エターニティピーチ」は、全体が桃色で中心が白く抜けるグラデーションの花色が美しく、観賞用に優れている。中心部の環状の花がむき出しになって品質が落ちる「露芯」がほとんど発生しない。生産性が高く、上向きの花のためアレンジメントやブーケなどに使いやすい長所がある。
「エターニティシャイン」は、7月から8月の夏場の高温下(28℃)での日持ち性が優れている。こちらも生産性が高く、露芯がほとんど発生しない。
植物は自身が発するホルモンのエチレンによって老化と落花を早めてしまう性質がある。エターニティシャインはこのエチレンに反応しにくいため輸送に向いている。宮崎県の生産地から東京まで長距離輸送後の日持ち日数は、既存の品種(6.2日)に対し15.2日と2倍以上だった。
花の名前は、日持ちの良い特徴から英語で永遠を意味するエターニティ(eternity)シリーズとして名付けた。エターニティピーチは桃のように可愛らしい花色で、エターニティシャインは夏場の強い光(Sunshine)や高温下でもよく育ち、光輝くような濃桃色からそれぞれ名付けた。
今回の2種は、2024年夏以降に苗の販売が始まる見込みで、11月頃には花屋さんの店頭に並ぶ。
農研機構では更に日持ちの良い超長命の品種や、花色、花型などの多様な種類を増やすための育種研究を進めている。日本産の切り花は海外でも高い関心を呼んでおり、輸出適応型の開発を進め、“攻めの農業”を目指す。