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ハニカム構造のフォトニック結晶で新奇な光渦伝搬現象―革新的な光機能材料の開発への貢献期待:物質・材料研究機構

(2023年6月2日発表)

 (国)物質・材料研究機構は6月2日、ハニカム構造のフォトニック結晶が起こす光渦の不思議な反転現象を発見したと発表した。この新奇現象はフォトニック結晶のトポロジカル特性と深く関連することが判明、今後の革新的な光機能材料開発への寄与が期待されるという。

 フォトニック結晶は誘電率や透磁率の異なるナノ構造体が周期的に並んだ人工の光学材料。光の伝わり方をナノ構造によって制御でき、新規な光機能の研究開発に用いられている。中でも、小さい光渦を作りながらフォトニック結晶の縁に沿って流れ、鋭角をなす経路や欠陥からの散乱を受けない光伝搬、いわゆるトポロジカル光特性が発見され、光集積回路技術の革新が期待されている。

 研究チームは、シリコン等の誘電体を微細に加工してハニカム構造のフォトニック結晶を作りトポロジカル光特性を発現させるアプローチに注目、今回、鏡映対称性と時間反転対称性を有するハニカム構造のトポロジカルフォトニック結晶を用いて実験した。

 その結果、このハニカム構造のフォトニック結晶の中で、光渦光源に誘起された多数の小さな光渦が干渉し合い、光源の周りに逆向きの大きな光渦を形成する不思議な光渦伝搬様式を発見した。

 すなわち、光渦光源が最近接の単位胞に同じ向きの光渦を誘起し、それらが逐次遠方の単位胞へ伝搬しながら干渉し合い、その結果光源の周りに逆向きの大きな光渦が形成されるというもの。

 渦流の反転は、構造による鏡映対称性の破れか、磁化による時間反転対称性の破れで発生することが知られているが、研究チームは今回発見された現象はハニカム構造のトポロジカルフォトニック結晶のディラック周波数分散関係に由来することを突き止めた。

 今回の実験、研究ではミリ波を用いたが、類似の現象は光通信帯域や可視広域でも期待され、鏡映非対称性物質の検出用顕微円二色性分散計やセンサー、フィルター、多重特異点光渦を利用した高精度広域顕微鏡技術へ応用可能という。また、先端的レーザー技術の確立にも寄与するとしている。