北日本の主要樹種の寿命と最大径を推定―天然林の再生に欠かせない有用な情報取得:森林総合研究所
(2023年6月8日発表)
(国)森林総合研究所は6月8日、北日本の主要な広葉樹42種の年輪と太さを計り、それぞれの樹種の寿命と最大径を推定することに成功したと発表した。多様な樹種から成る森林の成り立ちを理解し、行く末を予測したり森林を再生したりするのに役立つという。
1990年代に岩手県矢巾町(やはばちょう)の木材市場には、東北地方から北海道で伐採された大径木の丸太が集荷されていた。森林総研の研究グループは、丸太の太さと年輪を調べれば樹種の寿命の推定などに有用なデータが得られると判断、この天然大径木の大量集荷に着目し、1995年6月~1998年3月にかけて丸太調査を実施した。
丸太の中から大きいものを中心に選び、最終的に42樹種、1,684本の丸太の年輪数と直径のデータを得た。
樹木は理論的にはいつまでも生き続けられるが、実際にはある上限付近の齢・直径を超えて生きる個体はわずかしかない。そこで、上限付近の2.5%の個体のみが超えうる齢・直径を寿命・最大径の目安とし、独自の統計モデルを開発して、寿命と最大径の目安を推定できるようにした。
その結果、樹種によって大きく異なる寿命・最大径の目安の推定値を得た。
寿命の目安で最も長かったのはトチノキ、ミズナラ、ハリギリで、約700年。最も短かったのはミズキ、シラカンバ、ドロノキなどの約100年。北日本の天然林を代表するブナやハルニレは約400~500年だった。
最大径の目安については、最も大きかったのはトチノキ、ミズナラ、ハルニレの約125cm、最も小さかったのはミズキ、ヤマボウシの約45cmだった。
寿命と最大径にはおおむね正比例の関係があった。しかし、寿命の目安600~615年で最大径の目安60~80cmのアサダ、オノオレカンバ、イチイ、また、寿命の目安280年で最大径の目安45cmのヤマボウシのように、寿命の割には最大径の小さい樹種があった。これらの樹種は細いからといって必ずしも若いわけではなく、実はかなり老齢な個体を含む樹種もあった。
系統的に近縁な同じ属の樹種でも寿命が大きく異なる例もあった。特に顕著だったのはカバノキ属で、シラカンバは寿命が短く、オノオレカンバは寿命が長い、ウダイカンバやミズメなどは中間的だった。
北日本の主な樹木の寿命・直径について科学的で信頼性の高い情報を得たのは今回が初めてで、天然林の今後の再生や保全に欠かせない役割が期待されるという。