オリーブ葉からオリーブ油中の希少成分を製造―固体触媒用い一段かつ高収率で簡単に合成:産業技術総合研究所/筑波大学
(2023年6月14日発表)
(国)産業技術総合研究所と筑波大学の共同研究グループは6月14日、オリーブ油に含まれる希少成分のオレアセインという化合物を、オリーブの葉に豊富に含まれるオレウロペインという化合物から固体触媒で直接製造する技術を開発したと発表した。これまで未知であったオレアセインの機能の解明が進み、機能性食品や医薬品への応用展開が期待されるという。
オレアセインを合成する従来の全合成プロセスと今回開発した触媒プロセス ©産業技術総合研究所
オレアセインは、オリーブ油からの単離が難しい成分の一つで、入手が困難なため、これまで機能に関する研究は遅れていた。合成法は知られているが、その方法はD-リキソースという化合物から14段階のプロセスを経て合成するという複雑なものだった。
研究グループは今回、オレアセインの簡単な合成法の開発を目指し、その原料としてオレウロペインという化合物に着目した。オレウロペインは、オレアセインと一部類似した構造を持っており、オリーブ油やオリーブ葉に豊富に含まれていて、オリーブ葉から容易に抽出することができる。
そこで、オレウロペインを原料とし、触媒反応によって効率よくオレアセインを合成できないか検討した。種々の触媒を試した結果、表面が酸性の固体である固体酸を用いることにより、オレウロペインが一段階でオレアセインに変換されることを見出した。
特に、酸性に調整したモンモリロナイトという粘土鉱物が触媒に適していて、この触媒下、150℃で3時間の反応で、実際のオリーブ葉を原料に収率75%でグラム単位の変換が認められた。
オレアセインの機能はこれまで明らかにされていなかったが、ある種のオリーブ油に含まれるオレオカンタールという、オレアセインに似た構造の成分には抗炎症性があることから、オレアセインにも同様な生理活性が期待されており、今回の新製法の開発で、生理活性に関する基礎から応用にいたる研究の進展が期待されるという。