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大地の急速沈降と回転の同時発生を発見―太古の日本海拡大期の日本で起きていた:産業技術総合研究所ほか

(2023年6月26日発表)

 (国)産業技術総合研究所、茨城大学などの共同研究チームは6月26日、日本海の拡大期に当たる約1,720万年前から同1,660万年前の間に、茨城県大子町(だいごまち)周辺で大地(地盤)の急速沈降と回転とが同時に起こっていたことを発見したと発表した。同町を走る断層帯が太古のままの姿を残しているのに着目して解析に成功したもので、日本列島の成り立ちや日本海拡大のメカニズム解明に役立つことが期待される。

 今から約6,600万年以上前の白亜紀、日本列島はまだ今のような姿ではなかった。それが新生代になると日本海が形作られ始め約2,400万~1,500万年前に日本海の拡大は最盛期を迎える。そして、日本海が拡大する際、日本列島は回転したことが古地磁気(こちじき、地層に記録された昔の地磁気)の向きや強さから分かっている。

 こうしたことから、日本列島がどのように回転したのかそのメカニズムを解明するのに日本海拡大当時の地層に記録された古地磁気の方位を調べることが必要となっている。

 しかし、日本海が拡大した太古の昔、日本の大地の断層の形状や分布は、その後の地殻変動などで乱されてしまっていることが多く回転のメカニズム解明を難しくしている。

 特に東北日本は、回転の発生周期や回転の方向などが調査した場所によってそれぞれまちまちで、回転のメカニズムも諸説あって解明されていない。

 それに対し、大子町周辺地域は、日本海拡大時の巨大な断層と当時の堆積盆(地殻変動の堆積物でできた領域)がほぼそのまま残っている珍しい地域として知られる。今回の研究には、産総研地質情報研究部門の細井 淳 主任研究員、羽田 裕貴 研究員、茨城県立茨城東高等学校の谷井 優理恵 教諭、茨城大学理学部の岡田 誠 教授が参加した。

 調査を行ったのは、「棚倉(たなぐら)断層帯」と呼ばれる大子町を含む常陸太田市(茨城県)から棚倉町(福島県)にかけての長さが約60kmにも及ぶ巨大断層についてで、大子町周辺部に分布する日本海拡大期の地層を詳しく調べ解析した。

 その結果、大子町周辺の堆積盆で日本海拡大期に大地の急速沈降と回転とが同時に発生していたことを発見した。

 そして、約1,720万~1,660万年前の地層群と同1,660万~1,630万年前の地層群の古地磁気の方位が約30度異なることを見つけた。

 この研究結果が得られたことから研究チームは「大子町周辺の堆積盆は日本海拡大のメカニズム、特に堆積盆の形成・発達と大地の回転運動を解明するのに最適な地域」であるといっている。

日本海拡大の際に伴った棚倉断層帯の運動が盆地の形成・沈降・回転を引き起こしたイメージ図
※原論文の図を引用・改変および新しく作成した図を使用 ©産業技術総合研究所