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800℃を超える高温環境で使える半導体素子を開発―窒化アルミニウム半導体を用いて実現:筑波大学

(2023年6月30日発表)

 筑波大学は6月30日、800℃を超える高温環境で使用可能な半導体素子を開発したと発表した。窒化アルミニウム(AlN)半導体を用いて実現したもので、ダイオードは827℃、トランジスタは727℃での安定動作に成功した。地下資源開発など高温環境下で使われる機器類への活用が期待されるという。

 現在、シリコン(Si)製の半導体があらゆる機器に使われているが、Si素子の動作可能温度は300℃以下に限られている。このため高温環境下でSi半導体を使わざるを得ない場合には冷却や断熱などの工夫・対策が必要とされる。

 高温でも安定動作する半導体素子があれば、機器の小型軽量化や作業の高効率化が図れる。また、機器の故障リスクを低減できたりすることから、地下開発の作業コストを下げることが期待される。

 研究グループは、熱に対する耐性が最も優れている半導体の一つであるAlNに着目、今回、シンプルな構造を持つAlN素子として、ショットキー障壁ダイオード(SBD)と電界効果トランジスタ(MESFET)を作製し,室温から900℃までの電気的特性を調べた。

 半導体素子は温度を上げるとOFF時の電流が増え、ON時の電流との差(on/off比)が小さくなる。今回作製したAlN SBDでは827℃でもon/off比が104以上、AlN MESFETでは727℃でもon/off比約103以上を維持できた。これは、AlN層に高品質膜を利用したため、結晶欠陥を介して生じる漏れ電流を低く抑えることができたことなどによるという。

 高温素子は地下開発だけではなく、鉄鋼や宇宙・航空産業など幅広い分野への展開が期待できることから、今後、より高温での安定動作を目指し、電極や素子構造の工夫による特性の向上などを進めたいとしている。