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日本にも熱帯性高木林―1,900万年前の化石で判明:北海道大学/大阪公立大学/大阪市立自然史博物館/国立科学博物館ほか

(2023年7月4日発表)

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オベチェの仲間だけからなる化石林の林床を覆う
ウリノキモドキ (提供:北海道大学 山田 敏弘氏)

 北海道大学、国立科学博物館などの研究グループは7月4日、アフリカ中央部にだけ現存する熱帯性高木林「オベチェの森」が1,900万年前の温暖期には日本にも存在していたとする研究結果を発表した。当時の地層からオベチェの仲間である絶滅種「ワタリア」の幹の化石を発見、650万年前に絶滅した「ウリノキモドキ」の葉の化石と同じ樹木のものであることを突き止めた。地球温暖化後の植生変化を予想する手掛かりになるとみている。

 研究グループには大阪公立大学、大阪市立自然史博物館、福井県立恐竜博物館の研究者も参加、岐阜県美濃加茂市の木曽川河床に露出する約1,900万年前の地層中にあった約130本の化石化した樹木の幹を詳しく調べた。同じ地層からは、降り積もったただ一種類の樹木「ウリノキモドキ」の葉の化石も既に見つかっていた。

 樹木は葉や幹が別々になった後に化石となるのが一般的。このため、葉や幹には別の学名が付けられることが多い。ただ、今回調べた130本の幹の化石はすべてワタリアで、既に見つかっていた葉の化石は98%がウリノキモドキだった。

 このため調査対象とした化石林は、ワタリアの幹にウリノキモドキの葉がついていたただ一種類の樹木からなる純林であった、と研究グループは判断した。さらに葉と幹の化石の特徴を組み合わせて推定した結果、これらの樹木は現在もアフリカ中央部の熱帯にだけ分布するオベチェの仲間であると結論付けた。

 これらの結果から、過去の温暖期にウリノキモドキが北半球にまで分布域を広げ、その後1,600万年前を境に急速に進んだ寒冷化の中で、北半球では約650万年前頃に絶滅した、と研究グループはみている。

 現在進行中とみられる地球温暖化によって100年後には平均気温が4℃ほど高くなるとの推定があるが、研究グループは今回の研究で「気候変動により絶滅する植物と絶滅しない植物の違いは何かが見えてくることを期待している」と話している。

ワタリアの大型の化石樹幹 (提供:北海道大学 山田 敏弘氏)