寝不足はダイエットの敵―レム睡眠が足りないと甘いものが欲しくなる理由を解明:筑波大学
(2016年12月7日発表)
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構は12月7日、浅い眠り状態のレム睡眠が減ると、肥満につながるショ糖や脂質などを過剰にとりたがることを、マウスの実験で明らかにした。レム睡眠と脳の前頭前皮質、食物の好みとの直接的なつながりを解明した初めての成果となった。
睡眠不足は体重増加をもたらすと、以前からいわれてきた。体重を増やすショ糖や脂質などの食品を多くとるためだが、なぜ睡眠不足が高カロリーの食品を欲しくなるかの神経機構は不明だった。
また、食物の好みに前頭前皮質が重要な役割りを果たしていると考えられてきたが、睡眠との直接的な関係もわかっていなかった。
レム睡眠は、体は眠っているのに脳が起きている浅い眠りの状態で、この時には眼球が盛んに動き、夢を見ることもある。
研究グループは、レム睡眠不足のマウスを使って食事行動を調べたところ、ショ糖、脂質の両方の摂食量が増えた。そこで遺伝子改変技術を使って人為的にマウスの前頭前皮質の神経活動を抑えた。すると、レム睡眠量が減ってもショ糖をとる量は増加しなかったものの、脂質をとる量は増加した。
このことから太りやすい食べ物をとりたくなる欲求は、前頭前皮質によって直接制御されている可能性が示された。
レム睡眠は高齢とともに減少する。代謝やエネルギーバランスに悪影響を与え、体重増加につながり、糖尿病や血管障害などにつながることから社会問題に発展すると心配される。高齢社会で健康な食事のあり方を、新たな神経薬理学的な面から考える必要があると提案している。