レーザー光で摩擦力が変化―マイクロマシン制御に応用も:物質・材料研究機構
(2016年12月8日発表)
(国)物質・材料研究機構は12月8日、特殊な有機分子で覆った針先をサファイア基板上で滑らせる際の摩擦力がレーザー光の照射によって変化する現象を発見したと発表した。マイクロマシンなどの微小な駆動部の運動を自由に制御する技術として利用できる可能性があるという。
同機構の後藤真宏主席研究員と佐々木道子ポスドク研究員(現・東京大学特任研究員)が発見した。
実験に用いたのは、短冊状の小さなシリコン板を折り曲げて針状にし、その先端を有機分子の一つであるクマリン6の被膜で覆った探針。これにごく小さな力を加えてサファイア基板上に押し付けながら横方向に滑らし、そのときに短冊状のシリコン板に生じるねじれの大きさから摩擦力を測定した。
これらの装置を真空容器内に入れ、サファイア基板の下方から紫色のレーザー光(波長405nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m))を1cm2当たり100μW(マイクロワット、μは100万分の1)という微弱な強度で照射した。
その結果、レーザー光を照射したときの摩擦力が、照射しなかった場合の約10分の1に減少することがわかった。ただ、測定時に探針をサファイア基板に押し付ける力が強くしすぎると、光照射前の摩擦力に戻らなかった。これはクマリン6の分子被膜がすり減ったためとみられる。
研究グループは「光による摩擦制御が実現可能であることがわかった」として、今後さらに材料の組み合わせによる違いなどを調べる研究が進むことを期待している。