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肥満で発症する糖尿病―分子レベルで解明:筑波大学

(2023年8月8日発表)

 筑波大学は8月8日、肥満になると糖尿病を発症しやすくなる仕組みを解明したと発表した。体内の代謝産物の質や量を感知して血糖値を正常に保つセンサー役の分子が肥満によって壊され、血糖値を正常に保つインスリン分泌を低下させて糖尿病をもたらすという。肥満に伴って起きる様々な病気「メタボリックシンドローム」の発症予防や治療に役立つと期待している。

 筑波大学の島野 仁教授、関谷 元博准教授らが注目したのは、肝臓における代謝産物の質や量を感知するセンサー役として知られるたんぱく質「CtBP2」。これまでの研究でも肥満でうまく機能しなくなり、メタボリックシンドローム発症に重要な役割を果たすことが示されていた。

 研究チームは今回、肥満モデルマウスを用いた実験などを進め、インスリン分泌によって血糖値を調節するすい臓のβ細胞の機能変化などを詳しく調べた。さらに、血糖値を正常に保つために、β細胞でセンサー役たんぱく質を作る働きをしているCtBP2遺伝子の機能を壊したマウスを用いた実験なども進めた。

 その結果、肥満モデルマウスでは、血糖値を正常に保つためにβ細胞で作られるセンサー役のたんぱく質「CtBP2」の量が著しく低下していることを突き止めた。さらにこのセンサー役のたんぱく質分子は、肥満による酸化ストレスで壊されてしまうことも分かった。また、CtBP2遺伝子の機能を壊されたマウスでは、インスリン分泌低下型の糖尿病を示すことも確認できた。

 これらの結果から、インスリンの産生・分泌を担う、すい臓のβ細胞が肥満によって機能を維持できなくなり、インスリン分泌を低下させて糖尿病をもたらすと研究グループはみている。