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レモン果汁のマリネ調理で牛肉の肉質軟化し消化性も向上 未処理肉に比べ胃の未消化が25%減少―未処理肉に比べ胃の未消化が25%減少:ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社/農業・食品産業技術総合研究所

(2023年8月25日発表)

 ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)と(国)農業・食品産業技術総合研究所の共同研究グループは8月25日、レモン果汁のマリネ調理が牛肉の肉質軟化と胃消化性に及ぼす影響を解明したと発表した。レモン果汁への漬け込みにより牛モモ肉の肉質は柔らかくなり、胃での消化性が向上することが示唆されたという。

 レモンにはクエン酸、ビタミンC、ポリフェノールが豊富に含まれており、近年、調理や飲用に使用される機会が増えている。しかし、レモン果汁を調理に用いた際の食材の変化に関する学術的な報告や、調理した食事を摂った際の栄養成分の消化・吸収に関する報告は少ないのが現状。

 研究グループは今回、牛モモ肉をモデルとし、レモン果汁でのマリネ調理による肉質の軟化について検討した。さらに、農研機構が保有する胃消化シミュレーター(GDS)を用いて胃消化性の向上について評価した。

 実験では4mm厚にスライスした牛モモ肉をレモン果汁100%液に1時間漬け込み、IH調理器を用いて加熱調理した。

 肉の構造的な変化として一般に未処理の肉を加熱調理するとタンパク質が収縮し、肉質が硬化することが知られている。実験でも未処理肉では筋細胞の収縮および細胞外への肉汁漏出が認められたが、レモン果汁液で処理した肉ではこれらの現象が緩和されており、加熱処理時に起こる肉の構造変化の抑制が示された。

 テクスチャーアナライザーという装置で物性の変化を測定したところ、レモン果汁処理肉は小さな力で破断することが明らかになり、軟化に影響があることが認められた。

 GDSを用いた消化試験ではレモン果汁処理肉と未処理肉の消化の度合いを幽門部の通り易さで調べた。胃消化物は胃から十二指腸に向かって次第に細くなる管状の幽門部を通過する必要がある。幽門部を通過できない大きさの胃消化物は、消化が進まないものということになる。胃の出口である幽門よりも大きいふるいの網目を使用してこれを調べたところ、レモン果汁処理肉では未処理肉に比べ、未消化分が25%減っていた。

 今回の実験では、実際の調理での活用を想定し、レモン果汁とオリーブオイルを2:1の分量で作ったマリネ液での試験も実施した。その結果、レモン果汁100%の場合と同様な結果が得られたという。