廃水処理の活性汚泥プロセスに共通する微生物群を特定―捕食・寄生性の微生物が廃水処理の安定化に寄与:産業技術総合研究所
(2023年9月5日発表)
(国)産業技術総合研究所と長岡技術科学大学の共同研究グループは9月5日、廃水処理に利用される活性汚泥プロセスに共通する微生物群を特定したと発表した。廃水処理の高度化に向けた微生物叢(そう)の制御技術の確立などが期待されるという。
現在、産業廃水や都市下水を処理する技術として活性汚泥プロセスが普及している。活性汚泥プロセスでは数千~数万種とも言われる多種多様な微生物から成る微生物叢の働きによって、廃水に含まれる有機物の分解や窒素成分の除去が行われている。しかし、それぞれの微生物が担う役割や微生物同士の関係性については十分に理解されていない。
研究グループは今回、国内の産業廃水ならびに都市下水の処理施設で稼働している7つの活性汚泥プロセスから、のべ600個の活性汚泥サンプルを採取し、汚泥中で生息、活動している多種多様な微生物の集合体である微生物叢(マイクロバイオーム)の実態を調べ、微生物叢データを取得した。
得られた微生物叢データを比較することで活性汚泥の微生物生態系に共通して存在する微生物を特定し、処理能力に関連すると考えられる全炭素・全窒素濃度との関連を調査、さらに、微生物同士の捕食や寄生といった相互作用を持つ微生物に着目し、それらの微生物の機能を解析した。
その結果、有機物除去や窒素除去と相関の高い微生物をはじめ、汚泥浮上など処理性能の悪化に関与することが知られている微生物、そして、微生物同士の捕食や寄生といった性質が報告されている微生物が、共通微生物群に含まれていることを見出した。
なかでも捕食・寄生作用を有する微生物群が多数含まれていること、捕食・寄生性の微生物が廃水処理の安定化に寄与していることを見出した。
これらの研究成果は、廃水処理技術の課題となっている安定した効果的な処理や余剰菌体の低減に向けた技術開発につながるとしている。