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昆虫の変態は腸内共生細菌の機能も制御―共生器官も腸内共生細菌も幼虫型から成虫型に変化:産業技術総合研究所ほか

(2023年9月26日発表)

 (国)産業技術総合研究所と東京大学の共同研究グループは9月26日、カメムシの変態制御遺伝子を操作することにより、昆虫類の変態が、昆虫自身のみならず、腸内共生細菌の機能も制御していることが分かったと発表した。

 共生関係にある異種生物間の高度な機能的統合を明らかにした重要な成果で、変態や共生の機構を標的とした害虫制御法の開発に寄与する可能性があるとしている。

 これまでの研究で、カメムシ類の生存には特定の腸内共生細菌が必要なことは知られている。しかし、昆虫の変態がどのように微生物との共生関係に関わるのかはよく分かっていなかった。

 研究グループは今回、チャバネアオカメムシを対象に、遺伝子レベルの研究を通して共生と変態の関係の解明に取り組んだ。

 研究ではまず、変態制御遺伝子を操作して、カメムシが成虫の姿形への変化を早めたり、姿形の変化を失わせたりすることに成功した。引き続き、変態前の幼虫と変態後の成虫では、消化管の後端部に発達する共生器官の形態と機能が異なること、この共生器官の幼虫型から成虫型への切り替えが、変態制御遺伝子でコントロールされていることを見出した。

 また、幼虫型の共生器官は腸内共生細菌の保持に特化しているのに対し、成虫型の共生器官はそれに加えて食物の消化吸収を行うようになることを解明した。

 さらに、成虫の腸内共生細菌は卵殻形成に必須なアミノ酸を大量に合成するようになること、これら変態に伴うカメムシ自身と腸内共生細菌それぞれの変化が、多量の食物を摂取して数日ごとに卵塊を産むカメムシ成虫の旺盛な繁殖力を支えていることを解明した。

 これらの変化は、共生器官および腸内共生細菌の機能が、幼虫ではもっぱら自身の生育を支える共生関係の維持であるのに対して、成虫では旺盛な摂食のための食物消化および産卵のための卵殻成分の合成に切り替わるという、「幼虫期における成長」と「成虫期における繁殖」という生育段階に伴う機能的分業が基盤になっており、生物学的に意義深いことと指摘している。

 

チャバネアオカメムシの変態を制御する遺伝子を操作して、成虫になるタイミングを失った個体(左から2番目)と 通常の脱皮回数より早く成虫になった個体(左から3番目)を作り出した。 ©産業技術総合研究所