マイクロバイオーム用に標準物質―微生物の解析精度を管理:産業技術総合研究所
(2016年12月14日発表)
(国)産業技術総合研究所は12月14日、多種類の微生物の集まりであるマイクロバイオーム(複合微生物相)を解析するための標準物質を開発したと発表した。微生物の種類と量を遺伝子DNAで調べる際に利用する人工核酸標準物質を作成した。DNA上の遺伝暗号「塩基配列」を一度に数千万~数十億個も解読できる次世代シーケンサーで解析する際の精度管理に役立つという。
人間の健康に大きな影響を与えるとして、腸内に生息する微生物の集まり「腸内フローラ」が注目されている。こうしたマイクロバイオームがどのような微生物で構成されているかの解析は、さまざまな病気の診断や医薬品開発の重要課題になっている。
産総研は今回、細菌などの系統分類で目印となるマーカー遺伝子として広く利用されている16SリボソームRNA(rRNA)に着目、これを利用した精度管理用標準物質の開発に取り組んだ。開発したのは、自然界の16SrRNA遺伝子に存在する塩基配列不変の保存領域と、コンピューターで自由に設計できる可変領域を組み込んだ人工の核酸標準物質12種類。
マイクロバイオームの解析では、一般に試料となる微生物の遺伝子DNAをPCR法と呼ばれる技術で大量に増やし、その塩基配列をシーケンサーで解読する。新技術ではこの試料中に開発した人工核酸標準物質を添加しておき、微生物由来の遺伝子と同様に標準物質も大量に複製する。そうすると、シーケンサーで解読するときに微生物と標準物質の塩基配列を解析できるほか、両者を識別することも容易にできる。
その結果、複数種類の人工核酸標準物質をあらかじめ一定の濃度比で試料中に混ぜておけば、試料中に含まれるさまざまな微生物の構成比と複数種類の標準物質の構成比が解析できる。さらに、標準物質の構成比は予めわかっているため、マイクロバイオームの微生物の種類と量も一定の精度管理の下で解析できる仕組みだ。
産総研は「次世代シーケンサーによるこれまでの解析だけでは不可能だった各微生物群の絶対定量ができるようになった」として、今後、医療、食品、環境分野などのマイクロバイオーム解析に広く適用して信頼性の確立を目指す。