隣接するシリコン量子ビット間で強い誤り相関を観測―シリコン量子コンピュータの将来設計支援へ:理化学研究所ほか
(2023年10月10日発表)
理化学研究所と東京工業大学の共同研究グループは10月10日、隣接するシリコン量子ビット間に強い誤り相関を観測したと発表した。誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現する有力候補の一つであるシリコン量子コンピュータの今後の設計・性能向上に繋がる成果という。
誤り耐性型汎用量子コンピュータは、量子ビットに生じる誤りに対する耐性、すなわち誤り訂正機能を持ち、あらゆる量子計算を実行できる汎用的な量子コンピュータを指す。実現すると圧倒的な情報処理能力を持つことから、社会に変革をもたらすと期待されている。
この耐性型汎用量子コンピュータを実現する技術として近年注目されているのがシリコン量子ビット。量子コンピュータが情報処理に用いる量子情報の最小単位を量子ビットというが、量子ビットのうち、現在の半導体材料であるシリコンを用いて作製されたものをシリコン量子ビットと呼んでいる。
シリコン量子ビットは、現在の大規模集積回路技術と親和性が高く、大規模な集積化に有利とされる。
そこで研究グループは、シリコン量子ビットを用い、量子ビット誤りをもたらす「電子スピンの位相回転速度のゆらぎ」と呼ばれる現象を測定した。シリコン量子ビットの隣接ペアに対して誤りをもたらすゆらぎで、測定の結果から、隣接するシリコン量子ビット間では誤り相関が強くなり得ることが分かったという。
これは、シリコン基板に量子ビット列を高密度集積した際の量子誤り耐性、ひいてはシリコン量子コンピュータの将来設計に影響を及ぼす重要な知見としている。