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花粉の運び手いない?のに―アケボノシュスラン、植物繁殖のナゾ解明:神戸大学/大阪公立大学/森林総合研究所ほか

(2023年10月18日発表)

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日本本土と伊豆諸島のシュスラン、アケボノシュスランとその送粉者。
(A) 本土のシュスラン。(B) 本土のアケボノシュスラン。シュスランと比べて花筒が長い。(C) 本土のアケボノシュスランにやってきたマルハナバチ。長い口吻に付着した花粉塊を矢印が示す。口吻に対応し、花粉塊も長い。(D) 神津島のシュスラン。(E) 神津島の「アケボノシュスラン」。葉の形態や色は本土のアケボノシュスランとほぼ区別がつかないが、花筒は短い。(F) 神津島の「アケボノシュスラン」にやってきたツチバチ。短い口吻に付着した花粉塊を矢印が示す。口吻に対応し、花粉塊も短い。スケールバー: 30 mm (A–BとD–E)、15 mm (CとF)。©神戸大学

 海で隔てられ花粉の運び手となる特定種のハチがいない伊豆諸島の神津島(こうづしま)で、なぜ本土と同様の植物「アケボノシュスラン」が繁殖しているのか。神戸大学、大阪公立大学、(国)森林総合研究所は10月18日、この謎を解明したと発表した。島に生息するミツバチでも蜜を吸えるようこの植物が自らを進化させ、受粉できるようにしていたことを突き止めた。

 神津島は、大陸や日本本土と一度も陸続きになったことのない海洋島で、花粉の運び手となる昆虫の種類は少ない。特に神津島ではアケボノシュスランの花粉の運び手「マルハナバチ」が生息していない。それにもかかわらず、アケボノシュスランが広く分布しているのはなぜか。研究グループはこの謎の解明に取り組んだ。

 その結果、神津島で生育しているアケボノシュスランは本土のマルハナバチとは別種の「ツチバチ」に花粉を運んでもらっていることが分かった。一般にハチは細長い口吻(こうふん)を伸ばして花の蜜を吸うが、神津島のアケボノシュスランは口吻の短いツチバチに合わせて蜜のある花の筒状器官「花筒」を短くしていることを突き止めた。

 さらに、神津島のアケボノシュスランの遺伝情報をDNA分析で詳しく調べたところ、アケボノシュスランによく似た近縁種「シュスラン」との雑種であることが分かった。アケボノシュスランは長い花筒を持ち口吻の長いマルハナバチに花粉を運んでもらっているが、花筒が短いシュスランとの雑種になることで花筒が短くなり神津島にいるツチバチでも蜜を吸い花粉を運んでもらえるようになった。

 研究グループは「マルハナバチがいない神津島ではアケボノシュスランは、すべてツチバチに受粉を託すシュスランとの雑種に置き換わり絶滅していた」とする一方で、「マルハナバチが存在しない海洋島での適応進化ともとらえることができる」と話す。世界的に問題になっているマルハナバチの減少が生態系に与える影響について重要な示唆を与えるとみている。