高湿度下でもセットが乱れないヘアスタイリング材料開発―湿気で形状記憶効果を発動させスタイル維持:物質・材料研究機構ほか
(2023年11月8日発表)
ポリビニルアルコールセルロース微結晶(PVACM)コンポジット材料による湿度応答性形状記憶ヘアスタイリング効果
(©物質・材料研究機構)
(国)物質・材料研究機構と日本ロレアル(株)の共同研究グループは11月8日、髪の毛に塗って乾かすだけで高湿度環境でも望みのヘアスタイルをキープできるスタイリング材料を開発したと発表した。
髪の毛は水分の影響を受けやすく、多くの人が雨の日や発汗時などにへエアスタイルの崩れに悩まされる。湿度への耐性を与えるヘアスタイリング製品として、一般にヘアスプレーやジェルが知られているが、これらのほとんどは髪の毛に直接コーティングを施すことで髪の毛を湿気から保護することを目的としており、湿度の影響を軽減するに留まっている。そこで、高湿度環境下でもヘアスタイルを維持できる新たなスタイリング用材料の開発が望まれていた。
研究グループは今回、髪の毛を湿気から保護するのではなく、湿度にさらされたときに湿度に応答して形状記憶効果を発動するポリマー材料を開発した。
開発したのは、ポリビニルアルコール(PVA)と天然由来のセルロース微結晶(CM)からなるポリマーコンポジット材料。PVAには湿度に応答して発現する形状記憶効果があり、CMには分子内・分子間水素結合ネットワーク形成能がある。これらの特性を持つPVAとCMとを融合することで、湿度応答性形状記憶コンポジットを実現した。
PVA/CMコンポジットを髪の毛にコーティングして性能を評価したところ、何もコーティングしていない髪の毛は、80%湿度条件下に6時間さらされると髪束が広がるが、PVA/CMコーティングした場合は髪束の広がりが顕著に抑制された。それだけではなく、コーティングした髪の毛は湿度にさらされるとむしろ形状回復が誘起され、最初にスタイリングしたヘア形状へと近づくことが認められた。
PVA/CMコンポジットはCM量依存的に高いスタイリング効果を示すことも分かった。
さらに、コートしたPVA/CMコンポジットは温水やシャンプーで簡単に洗い流すことができる。
今回の研究により、湿度が誘起する形状記憶現象のメカニズムが明らかになったことで、湿度に対してより効果の高いヘアスタイリング方法を提案できる可能性があるとしている。