母親の食事の質で子供のぜん息症状変わる― 全国7万余組の母子を対象に調査:国立環境研究所
(2023年11月9日発表)
(国)国立環境研究所は11月9日、妊娠前からの母親の食事の質と子供の気管支ぜん息症状との関連を全国の70,530組の母子を対象に調べたところ、母親が妊娠前から栄養バランスのとれた質の高い食事をとることで子供のぜん息症状になるリスクが低くなる、という解析結果が得られたと発表した。
子供の健康と環境に関する全国調査としては、既に環境省が2010年度から「エコチル調査」の名称で全国の親子を対象に進めている。エコチルの名は、エコロジーとチルドレンの両方から採ったもので、胎児期から小児期にかけ子供が環境から受ける影響を明らかにすることを目指している。
気管支ぜん息は、人間の空気の通り道である気道(気管支)が炎症を繰り返すことで発生じ、気管支が狭くなってしまって呼吸時に“ヒュー・ヒュー”とか“ゼイゼイ”と聞こえる音を発する「ぜん鳴(ぜんめい)」と呼ばれる症状が起こる。
そこで研究グループは、1歳から4歳までのぜん鳴に関するデータがあり、かつ妊娠前の母親の食事のデータが揃っているエコチル調査の70,530組の母子を対象にして発生しているぜん鳴の解析に取り組んだ。
その結果、子供のぜん鳴パターンは、①ほとんど症状のない「症状なし」群(全体の69.1%)、②2歳までは症状がなく、その後急増する「幼少期発症」群(6.2%)、③2歳をピークにその後症状が消える「一過性」」群(16.5%)④持続的にぜん鳴症状を示す「持続性」群(8.2%)の大きく4つに分けられることを掴(つか)んだ。
そして、さらに妊娠前からの母親の食事と子供のぜん鳴パターンとの関連を調べたところ、母親の食事の質が高いほど「一過性」群や「持続性」群になるリスクが低いことが分かった。
この解析結果が得られたことから研究グループは、「妊娠前からの栄養バランスがとれた質の高い食事は幼少期における子供の特定のぜん鳴を緩和する可能性が明らかになった」とし、「特に、ぜん息の発症を引き起こすリスクの高い「持続性」パターンや、ぜん息と誤って診断されて不必要な治療を受ける可能性のある「一過性」パターンは、質の高い母親の食事によって低減される可能性があることが分かった」といっている。