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珍しい海洋性アメーバ、鳥取県泊港の海水から発見―謎に包まれていた系統的な位置が初めて明らかに:筑波大学

(2023年11月13日発表)

 筑波大学生命環境系の研究チームは11月13日、過去100年間で2例しか報告のない、珍しい海洋性アメーバを再発見し、遺伝子配列を解析、このアメーバの系統的な位置を初めて明らかにしたと発表した。

 再発見したのはRhabdamoeba marinaR.marina)と名付けられたアメーバ。1921年と1998年に見出され、今回が3度目の発見。

 筑波大の研究チームは2014年に鳥取県泊港で採集した海水から小型アメーバの培養株を確立することに成功、顕微鏡観察したところ、細胞はほぼ不動で、先端に棒状の構造を含んだ複数の扁平な仮足を持っていること、後方に伸びる2本の鞭毛を持つ鞭毛細胞があることなど、前回1998年の観察で見出されたのと同様な特徴が認められたことから、培養に成功したアメーバをR.marinaと結論した。

 前回の発見者は、R.marinaを特定の分類群に分類することは困難であるとしたため、以来分類学的には所属が不明なアメーバとして扱われていた。

 研究チームは今回電子顕微鏡観察を実施し、仮足の先端部分に棒状の射出装置と呼ばれる構造を捉えた。さらにリボソームRNAの遺伝子配列を取得して分子系統解析を行った。その結果、R.marinaはこれまで考えられていたケルコゾア門インブリカテア綱マリモナス目には所属せず、ケルコゾア門クロララクニオン綱の基部から分岐する系統であることが判明した。その結果に基づき、研究チームはR.marinaをクロララクニオン綱に分類することを提案した。

 クロララクニオン綱は光合成性のクロララクニオン藻類と細菌捕食性鞭毛虫のミノリサ属の2グループを含んでいるが、R.marinaはそれらとは異なり、様々な真核藻類や従属栄養性の原生生物を捕食することが知られている。R.marinaはクロララクニオン藻類の進化過程を推測する上でも重要な生物としている。

Rhabdamoeba marinaの顕微鏡写真
AとBはアメーバ細胞の光学顕微鏡写真、Cは鞭毛細胞の光学顕微鏡写真、Dは仮足先端に位置する射出装置の電子顕微鏡写真。矢頭は仮足先端の棒状の構造(射出装置)、二重矢頭は鞭毛を示している。©筑波大学