ヒト細胞を用いた化学物質の有害性評価手法を開発―環境化学物質の安全性などを簡便・迅速に評価:産業技術総合研究所
(2016年12月26日発表)
(国)産業技術総合研究所は12月26日、化学物質の有害性をヒト細胞を用いて簡便・迅速に評価できる手法を開発したと発表した。これまでに過酸化水素、塩化水銀、シスプラチンなどで有効性を確認した。今後さまざまな化学物質を対象に適応性を調べ、環境、医療、食品など広範な分野での応用を目指したいとしている。
産総研は先に、ヒト細胞が有害性を感知すると細胞内でのRNA分解速度が遅くなるという現象を発見した。今回この知見を化学物質の有害性評価に応用した。
開発した新手法は、細胞内に蛍光プローブを導入し、化学物質によるRNA分解速度の変化を蛍光の強弱で評価する仕組み。化学物質に有害性がないと発光用色素が蛍光を発し、有害性があると蛍光は消えた状態を保つように工夫した。この蛍光強度を指標に有害性を評価する。
実験では、蛍光プローブをヒト胎児の腎臓に由来するがん細胞内に導入し、過酸化水素などのモデル環境化学物質にさらした。その結果、化学物質を添加しなかった系では強い蛍光を観測、化学物質を添加した系では化学物質の濃度に依存して蛍光強度が弱くなった。化学物質暴露の2時間後には化学物質の濃度によって蛍光強度が明確に違っていた。
細胞死を有害物質の検出に利用する方法があるが、試薬を用いるこの方法では検出に半日以上かかったり、化学物質の濃度の違いは検出できなかったりする。新手法にはこうした問題点がなく、簡便・迅速に、検出物質の濃度の違いまで評価できるのが特徴。
化学物質の生体影響評価は動物試験から細胞試験へと転換が進んでいる。新手法は、環境中の化学物質の有害性評価をはじめ新素材である機能性化学物質の安全性評価など、幅広い分野での応用が期待されるという。