植物の長期高温耐性にmRNAスプライシングの正確性関与―何日も続く高温に適応する作物育種に期待:東京農業大学/九州工業大学/東京大学/理化学研究所
(2023年11月14日発表)
東京農業大学、九州工業大学、東京大学、理化学研究所の共同研究グループは11月14日、シロイヌナズナを用いた植物の長期的な高温耐性に関する研究で、MOS4関連複合体と呼ばれる複合体の正確なmRNAスプライシング維持が長期高温耐性に不可欠であることが分かったと発表した。何日も続く高温に適応する作物の育種に繋がる成果という。
高温は作物の生長や収量に影響を及ぼす重大なストレスで、近年、気温上昇によって作物収量は減少、植物の高温耐性メカニズムの解明と耐性作物の作出が植物科学の重要な課題となっている。従来の植物高温応答研究のほとんどは短期的な高温に対するものであり、長期的な高温に対するメカニズムはほとんど分かっていなかった。
研究グループは今回、2,000種を超えるといわれるシロイヌナズナ野生系統のうちの174種を用い、長期間続く高温ストレス(37℃、7日間)に対する耐性を、またそのうちの88種を用いて短期間の極端な高温ストレス(42℃、50分間)に対する耐性をそれぞれ評価した。
その結果、長期高温耐性は、より一般的に研究されている短期高温耐性とは異なるメカニズムによって制御されていることが示唆された。
長期高温ストレス耐性系統と、長期高温の影響を受けやすい長期高温ストレス感受性系統とを交配したF2集団を用いて遺伝学的解析を行い、長期高温ストレス耐性に寄与する遺伝子、LHT1遺伝子を見出した。
また、長期高温耐性を欠損したシロイズナズナの変異株を単離し、原因遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、mRNAスプライシングに関与するRNAヘリカーゼをコードするMOS4関連複合体の遺伝子だった。シロイヌナズナの長期高温に対して高感受性を示す野生系統や、長期高温耐性を欠損した変異株では、長期的な高温ストレス下で有害なスプライシング現象が広く見られた。
これらのことから、MOS4関連複合体の正確なmRNAスプライシング維持が長期高温耐性に不可欠であることが明らかになったとしている。