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労働意欲の低下は、睡眠不足、運動不足、遅い夕食が深く関係―さらに男性は歩行速度の遅さ、女性は食べる速度が早いのが問題:筑波大学

(2023年11月15日発表)

 筑波大学体育会系の武田 文(たけだ ふみ)教授の研究グループは11月15日、企業従業員の生活習慣と労働パフォーマンスとの関係を調べたとこる、睡眠不足、運動不足、寝る前の夕食などが強く関係していたことが分かったと発表した。健康教育や職場環境の整備、男女差を踏まえた支援策が必要としている。

 少子高齢化で日本の生産年齢人口が減少し、労働力の減少と生産性低下が大きな問題になっている。企業ではさまざまな健康経営策を講じているものの、生活習慣と労働パフォーマンスとの関係は明らかでなかった。

 そこで国内のある企業の従業員(21歳から69歳)1万2,476人について、特定健康診査と診療報酬明細書のデータなどを使い生活習慣と労働パフォーマンスとの関係を分析した。

 生活習慣については、質問票のデータから喫煙、運動習慣、身体活動、歩行速度、就寝前の夕食、食べる速度、睡眠による休息などの11項目を使った。

 労働パフォーマンスは世界保健機関(WHO)の質問票に基づいて出勤の従業員の労働能力の低下を調べた。受診状況は診療報酬明細書のデータから高血圧、糖尿病、歯科治療など9項目を基に判定した。

 その結果、男性は睡眠不足、運動習慣の欠如、歩行速度、喫煙、就寝前の夕食、朝食の欠食の順番で労働パフォーマンスの低下と強く関係していた。女性は睡眠不足、就寝前の夕食、食べる速度、運動習慣の欠如の順で関係していた。

 この結果、企業従業員の労働パフォーマンスの低下は、男女ともに睡眠不足が最も強く、続いて運動習慣の欠如、就寝前の夕食の順だった。従業員の労働パフォーマンスの改善には、この結果を基に男女ともに睡眠の改善、運動習慣の定着、適切な時間の夕食摂取に向けての指導と支援を必要としている。