がん光線力学療法に新物質―光で異物排除を始動:筑波大学
(2023年12月1日発表)
筑波大学は12月1日、光を照射してがん細胞を狙い撃ちにする光線力学療法に欠かせない光感受性物質を見つけたと発表した。光を照射すると不要になったたんぱく質や異物を生物が自ら分解するオートファジーと呼ばれる仕組みを始動させ、がん細胞を効率よく壊すことを突き止めた。従来とは異なる仕組みでがん治療を可能にするだけでなく、新しい創薬の世界を切り開く可能性もあるという。
筑波大が注目したのは、近年開発された光感受性物質「ポルフィリプロテイン(PLP)」。がんに対する高い治療効果を持つことはこれまでも知られていたが、今回初めて光線力学療法でがん細胞を殺す仕組みをラットによる実験で解明した。
実験では、光感受性物質PLPがラットの体内に取り込まれると細胞内にある「ファゴソーム膜」に蓄積、細胞が異物とみなして不要な成分を分解するオートファジーの仕組みが働き始めることを突き止めた。さらにラットの体外から特定の波長の光を照射すると、オートファジーの仕組みで作られた物質が活性酸素を発生させ、がん細胞を壊死させることなどが分かった。
ファゴソームはがん細胞や正常細胞などあらゆる細胞で作られるが、今回明らかになった仕組みによってポルフィリプロテインが光線力学療法によってがんに高い治療効果を発揮する理由が分かったという。
日本人の死因第一位を占めるがんの治療には、手術療法、化学療法、放射線療法が主に用いられているが、いずれも手術後の患者へのダメージ大きいことが課題となっている。そのため患者へのダメージを小さくできる第4の治療法として、光線力学療法が注目されている。