電極-固体電解質の電位分布計測の新手法―次世代蓄電池の実用化に手がかり:物質・材料研究機構
(2017年12月26日 発表)
(国)物質・材料研究機構は12月26日、次世代蓄電池として期待される全固体リチウムイオン二次電池の実用化の手がかりとなる新技術を開発したと発表した。充電後に電極と固体電解質の界面で電気抵抗が上昇し、高い出力密度が得にくくなる原因の解明に役立つ計測手法を開発した。電池劣化の要因解析だけでなく、高性能化に向けた界面設計にも応用できると期待している。
全固体リチウムイオン二次電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電する二次電池の一種で、正極と負極間の電解質に無機固体物質を用いたもの。安全性や性能面から次世代の蓄電池として期待されている。ただ、電極と固体電解質の界面でリチウムイオンの伝導抵抗が高く、高い出力密度が得られないことが実用化の大きな壁になっていた。
そこで同機構は、充放電の前後で界面にどのような変化が起きているかを詳しく解析する手法の開発に着手した。具体的には、電極-固体電解質の測定用試料の切り出しから、試料表面の電位分布をナノメートル(nm、1nmは10億分の1m)単位で解析できる走査型プローブ顕微鏡による計測まで、すべての操作を不活性ガス中または真空中で進め、電池の動作途中の状態を維持したまま界面の電位分布を観察できるようにした。
電極材料と固体電解質を混合した正の複合電極を持つ全固体リチウムイオン二次電池を新手法で評価したところ、充電に伴って複合正極の電位分布の変化を直接可視化することに成功。固体電解質中にマイクロメートル(μm、1μmは100万分の1m)単位でリチウムイオン濃度が減少した領域が広がっていることや、充電状態が場所によって異なり不均一になった様子がうかがえた。
従来から、電極と固体電解質の界面で電気抵抗が高くなってしまうのは充電時に固体電解質内にリチウムイオン欠乏層や界面欠陥ができるため、といった仮説が考えられていた。しかしこれまでは、こうした仮説を実験的に確認する方法がなかった。
今回初めて、動作状態の電極-固体電解質界面の電位分布を測定する手法が実現できたことで、同機構は「全固体リチウムイオン二次電池の高抵抗の起源を明らかにできる可能性がある」と話している。