体内の脂質合成に新酵素―生活習慣病対策に貢献も:筑波大学
(2023年12月8日発表)
筑波大学は12月8日、肥満に伴う生活習慣病に深く関わる脂質が体内でたんぱく質から作られる新しい仕組みを発見したと発表した。脂質の合成を制御するたんぱく質を切断する新たな酵素を発見、脂質の主成分である脂肪酸の種類によってその働きが制御されることも突き止めた。高脂肪・高コレステロールの食事をとってもこの酵素の働きを抑えることで脂肪肝が改善される可能性もあるとして、生活習慣病の新たな治療戦略につながると期待している。
筑波大の島野仁教授の研究チームが発見したのは、体内で脂質の主成分である脂肪酸が作られる際に必要なたんぱく質「SREBP-1c」を切断する酵素。細胞の小胞体膜と呼ばれる部分に存在する「ロンボイドプロテアーゼRHBDL4」だ。
今回の研究では、この酵素の活性が脂質中に含まれる脂肪酸の種類によって調節されることを突き止めた。肉やバターなどの動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸に対しては酵素が活性化して働くが、魚やゴマに多く含まれる多価不飽和脂肪酸に対しては活性化しないという。
そこで研究チームは、遺伝子操作によって今回発見した酵素を作れないようにしたマウスに高脂肪・高コレステロール飼料を食べさせる実験を試みた。その結果、たんぱく質を切断して飽和脂肪酸を作る働きが阻害され、肝脂肪による病気の状態は改善されることが分かった。
これらの結果から、研究チームは今回の成果が「メタボ病態や脂質代謝異常を基盤とした生活習慣病に対する新たな治療戦略の構築につながる」と期待している。