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世界の鉄鋼・セメント供給可能量を推定―「パリ協定」で大幅ダウンの恐れ:国立環境研究所ほか

(2023年12月11日発表)

 (国)国立環境研究所と英国ケンブリッジ大学の国際共同研究チームは12月11日、気温上昇を「パリ協定」で抑えカーボンニュートラルな社会を実現すると、温暖化の元凶のCO₂(二酸化炭素)を出している鉄鋼・セメントの供給が将来の世界需要に対し不足する可能性が高くなる、という研究結果が得られたと発表した。社会基盤を支えてきた鉄鋼・セメントが豊富・安価に得られる時代に終わりがくることを示唆する結果が出たとし、社会システムのあり方などを考える必要があると警鐘を鳴らしている。

 パリ協定は、気温上昇を起こす温室効果ガスの排出削減を求める国際協定。産業革命からの気温上昇を1.5~2℃未満に抑えることを訴えており、温暖化の一番の原因であるCO₂の排出量とその吸収量とを均衡させることで実質の排出をゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルの実現が提唱され、日本など先進各国は2050年までに達成することを目標にしている。 

 しかし、早くもその難しさを訴えるかのように国連の世界気象機関(WMO)は、今後5年で世界の平均気温が一時的にではあるが1.5℃上昇する可能性があるとする研究成果を発表している。

 なかでも、鉄鋼とセメントの生産で発生しているCO₂は多く、世界の全CO₂排出量の内の約15%を占めていると見られ、強力な対策が望まれている。

 こうしたことから、環境研は、これまでも鉄鋼・セメント部門のカーボンニュートラル達成に向けた発表を行っているが、対象が日本に限られていた。

 今回の研究は、ケンブリッジ大学の研究者と共同で全世界の鉄鋼・セメント産業を対象にしてカーボンニュートラル達成に向けて行った。

 先ず、これまでに国際機関から発表された全ての報告書を調査。それに基づき、気温上昇を1.5℃に食い止めるためのCO₂排出許容量内でどの位の量の鉄鋼・セメントが世界に供給できるのか供給可能量を検討した。

 すると、鉄鋼とセメントは、世界的に不足する可能性が高いことが示され、供給可能量は2050年の需要の鉄鋼が58~65%、セメントは22~56%のレベルに留まる推定値になったという。

 研究チームは、この結果について「社会基盤材料が豊富で安価に手に入る時代の終わりを示唆している」とし、豊富・安価に入手できなくなる可能性があることを世界全体が共有し、それに対応するための産業間の連携や社会システムのあり方などを議論することが必要だと訴えている。