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非喫煙女性の食道がん―免疫細胞が関与:理化学研究所ほか

(2023年12月15日発表)

 (国)理化学研究所は12月15日、喫煙や飲酒の習慣がない女性に増加傾向がみられる食道がんには免疫細胞の一種「好酸球(こうさんきゅう)」が関与していると発表した。食道がんを患う喫煙男性とゲノム(全遺伝情報)解析の結果を比較して突き止めた。好酸球を標的にした新しい免疫療法の開発につながると期待している。

 喫煙や飲酒が食道がんの発症に関係していることはよく知られているが、そうした習慣がない女性になぜ食道がんが増加傾向にあるかは未解明だった。そこで理研は食道がんの一種「食道扁平上皮がん」を患う非喫煙者で飲酒習慣も少ない女性(20人)のがん組織を採取してゲノム解析を進め、同じく食道がんの男性喫煙者(74人)のデータと詳しく比較・分析した。

 その結果、原因となる変異遺伝子に男女に違いは見られなかった。ただ、女性のがん組織には活発に活動する免疫細胞の一種である好酸球が多いことが分かった。さらに男女計4人の食道がん組織から免疫細胞を抽出、そのうち約3万1,000個の細胞を詳しく分析したところ、女性の食道がんでは特に好酸球が活性化していた。

 今回の研究対象になった非喫煙女性の平均年齢は71歳で、男性の63歳よりも高かった。遺伝子解析の結果でも、女性非喫煙者の食道がんの発生には加齢が強く関与していることがうかがえたという。また、がんの進行度については両者に大きな違いはなかったが、手術などの治療の予後は女性の方が良好な傾向がみられた。

 日本では食道がんは男性喫煙者に圧倒的に多いが、今回初めて非喫煙女性の食道がんに免疫細胞の好酸球が関与していることが分かったとして、理研は新たな治療法の開発の指針になるとみている。