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温泉水中の「特異な成分」から、地球深部の「化石水」の循環を解明―変動を読み取り、地震や火山噴火の予知・予測につながる可能性も:筑波大学

(2023年12月15日発表)

 筑波大学生命環境系の山中勤教授と安達郁哉さんの研究グループは12月15日、温泉水に含まれる地球深部(地圏)から染み出した「特異な水」の同位体比を調べ、地球深部で起きている化石水の循環を解明したと発表した。この水は約500万年近くも閉じ込められており、日本付近で沈み込むフィリピン海プレートと太平洋プレート、特定地域の海底堆積物の3か所にみられると明らかにした。特異水は温泉水中でも日々混合割合が変動しており、地震や火山噴火の予知に繋がるのではと新たな期待が高まっている。

 温泉水の大部分は雨水や融雪水(ゆうせつすい)だが、水素と酸素の同位体比を調べると地下深部から染み出した特異な水が含まれていることが分かる。

 同位体とは化学的性質は同じだが質量が異なる原子のこと。同位体の比率を調べることで物質が作られてきた経緯や、その物質が変化したプロセスなどを解明できる“進化の時計”でもある。

 研究グループは、この特異な水が主に岩石内部や鉱物結晶中に長く閉じ込められ、岩石に同化しつつ進化した水の化石とみる。化石海水やマグマ水なども同じ進化をたどったが、進化の段階が違うとした。

 鉱物の隙間に保存された間隙水や結晶内に取り込まれた構造水などは、同位体進化モデルによって得られる地圏水の進化の軌跡によく合っていることも確かめられた。

 このモデルを使うと、温泉水に雨水が混入する前の純粋な地圏水の同位体組成が復元できる。また同位体進化モデルでは、海洋プレートの沈み込みに伴う数百万年の温度上昇などから、沈み込み境界からの距離に応じた地圏水の同位体の変化も計算できる。

 雨水の影響を除去した地下水成分の同位体を復元する手法を開発し、中央日本(関東、甲信越、静岡)の39か所の温泉水を調査したところ、3つのタイプに分かれた。

 温泉群A(長野、群馬、埼玉、山梨、静岡の各県に分布)はフィリピン海プレートに閉じ込められた海水が、150万年から500万年かけて深度数十Kmに達する過程で変質し、放出された。 

 温泉群B(長野、静岡両県の東経138度近辺のみに分布)は太平洋プレートに閉じ込められた海水が400万年から500万年かけて深度150〜200Kmに達して変質、放出された。

 温泉群C(新潟県と群馬県南西部の中新世海成層地域に限定的に分布)はA、Bの温泉群とは異なり、500万年以上前に海底の地層に閉じ込められ、同位体的進化が弱い化石海水であった。

 また、これまでプレート沈み込み時に放出される水が地球内部で消費されるのか、それとも地表に達するのかは不明だったが、プレート水が温泉水に混じって地表に出ている有力な証拠を掴んだとしている。

 この成果は、地震や火山噴火の発生で水の関与を明確化するのに役立ち、将来の予知・予測につながる可能性があるとみている。