高温環境下で新ウイルス―第三系統の可能性も:筑波大学ほか
(2024年1月16日発表)
筑波大学、(国)海洋開発研究機構などの研究グループは1月16日、70~80℃という高温環境下で生息するRNAウイルスを発見したと発表した。九州の雲仙(うんぜん)と霧島(きりしま)の温泉にいた生命の共通祖先に近いとされる微生物から分離した。RNAウイルスには二つの系統があることが知られているが、新ウイルスはこれらとは大きく異なる遺伝子配列を持っており第三の系統である可能性もあるという。
研究グループには高知大学と創価大学も参加、これまでRNAウイルスが見つかっていなかった70℃以上、水素イオン濃度(ph)が2以下という高温・高酸性の温泉でウイルスがいるかどうかを調べた。
その結果、長崎県の雲仙温泉と鹿児島県の霧島温泉にある噴気地帯で新しいRNAウイルスが存在する証拠を見つけた。具体的には、高温・酸性の温泉中に生息していた生命の共通祖先に近いとされる微生物集団から、従来とはまったく異なる新しいRNAウイルスのゲノム(全遺伝情報)を見出した。そのため研究グループは、このゲノムを持つウイルスが世界初の極限環境RNAウイルスであるとして、HsRV(Hot spring RNA virus)と命名した。
微生物を宿主とするRNAウイルスはこれまで数十万種を超えるものが知られており、大きく二つの系統に分けられている。これに対し、新発見のRNAウイルスが増殖する際に必要とする複製酵素は、既存の二系統が持つ酵素の中間的な立体構造を持っていることが分かった。そのため、既知の二つのRNAウイルス系統(界)とは異なる第三の界が存在する可能性まで示唆された、という。
研究グループは今後、新ウイルスの形状や生態、分子生物学的な性質をさらに明らかにし、「実際に第三の系統(界)であるのか、その検証を進める」と話している。