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火山灰の路面で車両が空転、脱出不能になるメカニズムを解明―降灰10cmで二輪駆動車はタイヤが空転、四輪駆動車は安定して走行:防災科学技術研究所ほか

(2024年1月23日発表)

 (国)防災科学技術研究所と山梨県富士山科学研究所は、火山灰が道路に堆積した際に車両が安定して走行できる車の種類と、路面に積もった降灰の厚さ(路面からの高さ)との関係などを実験で測定し、1月23日にその結果を公表した。降灰の厚さが10cmを超えると二輪駆動車はスタック(空転)して自力脱出できなくなるが、四輪駆動車は安定して走行が可能で両者に大きな差があることが分かった。

 山梨県は、富士山の噴火に関する災害情報や避難方法を視覚的に分かりやすくまとめた「富士山ハザードマップ」を作成している。2021年に改訂版の作成に伴って防災研と共に降灰路面を想定した車両安全性のスタック分析を実施した。

 車両は全輪駆動(四輪駆動)と二輪駆動(前輪駆動と後輪駆動)の異なるタイプ9台の市販車を使った。試験路面の形状は直線(平坦)路、曲線路、勾配路(坂道)、過酷路の4タイプで調べた。

 路面にはいずれも粗粒、中粒、細粒の模擬火山灰を敷き詰めてあり、停車状態からの発進・急発進の繰り返しと、時速5kmで降灰路面に進入した場合の通過性能などを測定した。また直線・平坦路と勾配路の違い、過酷路(降灰が厚さ20cm以上)と勾配路の違いなどを調べた。

 この結果、全輪駆動はいずれの試験路でも、降灰の厚さやアクセルの吹かし方によらずスタックせずに安定して走行した。これに対して二輪駆動は明らかに劣り、火山灰が厚くなるにつれてスリップする割合が大きくなった。厚さが10cmを超えるとあらゆる場面で自力脱出できなくなった。

 スタックする要因は火山灰が軽いためで、タイヤが高速回転すると火山灰が外に掻き出されてタイヤは沈み込み、走行抵抗が大きくなって空転することが判明した。

 さらにタイヤチェーン(金属製または樹脂製)を装着した場合の効果も測定した。チェーンの角が引っ掻くことによって摩擦力を増加させる(エッジ効果)ため雪道や凍結路面では有効だが、火山灰粒子はタイヤとの摩擦係数が氷や雪ほど低くないために走行にはむかないことが判明した。

 火山噴火で火山灰が堆積した道路を車両に乗って避難すると、車両の空回りリスクが高くなり交通渋滞を引き起こすことが明らかになった。避難には車を使わずに、徒歩がより安全で確実だとしている。

降灰路面を走行しスタックした車両の駆動輪。タイヤの高さの半分以上が火山灰層に沈み込んでいる。火山灰の厚さ約 20 cm、試験車両は No.8、夏用タイヤを装着。矢印は車両の進行方向。 ©山梨県富士山科学研究所
樹脂製タイヤチェーンを装着して降灰路面を走行しスタックした車両の駆動輪。非装着時と同様にタイヤが降灰路面に沈み込んでいる。走破距離はタイヤチェーン非装着時と比べほぼ同じか短くなった。 ©山梨県富士山科学研究所