建築材料の脱炭素化―国産木材の活用で達成も:国立環境研究所
(2024年1月25日発表)
(国)国立環境研究所は1月25日、植林と木造建築を増やすことで温暖化対策に必要な建築材料のカーボンニュートラルが実現できる可能性があると発表した。名古屋大学、英ケンブリッジ大学と共同で建築材料の脱炭素化と森林による炭素の吸収増を同時に達成する道筋を示した。建築物の木造化と国産木材の供給、造林を同時に推進することが重要だとしている。
温暖化をもたらす日本の温室効果ガスの排出量は、環境省調べで2021年度に二酸化炭素(CO2)換算で11億7,000万t。このうち建築材料の生産に伴って排出されたのは2,800万tで、その大半が鋼材とコンクリートによるものだった。
そこで研究チームは、さまざまな統計や過去の研究成果を用いて、建築材料の生産に伴うCO2排出の現状を解析。建築物には5つの構造形式があるが、このうち木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造がCO2排出量の約97%を占めることを突き止めた。
さらに延べ床面積当たりのCO2排出量を調べると、木造が1㎡当たり約120kgと最も低かった。一方、鉄骨造はその二倍以上の約260 kg、鉄筋コンクリート造は三倍以上の約380 kgだった。
これらの結果をもとに、日本が目標とする2030年のCO246%削減、2050年のカーボンニュートラルという目標達成への道筋を建築材料の面から探った。その結果、木造建築の拡大や設計最適化、建築物の長寿命化など6つの対策をすべて実施すれば、この目標を達成できる見通しという。
ただ、日本の温室効果ガス排出量を計算する際には輸入木材の寄与は含まれていない。このため国産材の供給率が現状と変わらなければ、6つの対策を最大限実施したとしても2050年のカーボンニュートラルという目標は達成できないという。そのため、国環研は「国産材の供給拡大が必須であり、木造化、国産材供給、再造林を同時に推進する取り組みが重要」とみている。