高強度超短パルスレーザーが誘起―共鳴現象を理論的に解明:筑波大学
(2017年1月10日発表)
筑波大学は1月10日、高強度超短パルスレーザーを照射したときに半導体の結晶内に誘起される微細な振動現象「コヒーレントフォノン」の未解決問題を解明したと発表した。この振動が起きる直前に生じる特異な現象「ファノ共鳴」を理論的に定式化、その妥当性の検証に成功した。光と電子、結晶振動の強い相互作用で起きるさまざまな現象の解明に役立つと期待している。
筑波大の日野健一教授、長谷宗明教授らの研究グループが解明した。
コヒーレントフォノンは、高強度のレーザー光を数ピコ秒(1兆分の1秒)から数フェムト秒(1,000兆分の1秒)という極めて短いパルス状にして半導体に照射したときに起きる結晶の振動現象。極微の世界で成り立つ量子力学的な効果によって物質内で規則正しい粒子のように振る舞うことが知られている。
コヒーレントフォノンが生まれる直前には、ファノ共鳴と呼ばれる現象が起きて瞬時に消滅するとみられている。このファノ共鳴は、電子と電子が抜けた後にできる正孔が対になって生まれるポーラロニック準粒子が媒介役となって生まれるという理論「PQモデル」が実験的に提案されていたが、これまでその妥当性は検証されていなかった。
今回、研究グループは高強度超短パルス状レーザーによる実験データを詳しく解析、理論的にファノ共鳴が起きている可能性を見出した。数値計算でもファノ共鳴が過渡的に表れることが示され、実験の結果を初めて再現することができた。
この結果について、研究グループは「PQモデルの妥当性が検証されたと考えられる」として、コヒーレントフォノン生成にまつわるさまざまな物理学の解明や、他の光誘起超高速ダイナミックスの理解に役立つと期待している。